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企業の相次ぐ不祥事 本当に大丈夫なのか『ものづくり日本』

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日本のものづくり力は衰えてきたのか

「日本のものづくり力は世界一」。最近このキャッチフレーズを揺るがすようなニュースがマスコミを賑わしています。特に、2000年代に入ってから多くの報道が目につきます。例えば、2000年三菱自動車のリコール案件隠ぺい、2007年東洋ゴムの断熱パネル性能データ偽装、2015年タカタのエアバックリコール、同年東洋ゴムの免振ゴム性能データ偽装、2016年三菱自動車の燃費性能偽装、そして2017年神戸製鋼の鋼材性能データ偽装や日産自動車の無資格検査員問題等です。

日本の十八番であった、電気業界においても、半導体、液晶TV、携帯電話等において、ルネサス、シャープ、三洋、東芝など世界に名だたる大企業がトップの座を海外企業に取られ、企業存続の危機にまで追い込まれる状況を見るにつけ、日本のものづくり力の競争力低下を感じずにはおられません。

イノベーション力とガバナンス力の欠如が問題

なぜ、このような状況に陥ってしまったのでしょうか。敢えて乱暴に言うことが許されれば、次の2つの原因があると思います。一つは、従来の成功体験に甘んじて、世界の潮流を見誤った日本企業のイノベーション力の欠如です。これは、日本的な経営体質の問題と捉えられ、いわゆる経営戦略の失敗と言われています。もう一つは、現場力の弱体化と会社組織のガバナンス力の欠如です。

どちらも、従来の現場力、組織力、そして経営力が日本企業の従来の形態では時代に即さなくなって来ている証左ではないでしょうか。特に、今回の品質データ偽装問題のような、日本の製造業が最も得意であった一流の品質、いわゆる「日本品質」の信用を失いかねない状況には、強い危機感を持たざるを得ません。

製造現場の弱体化が進んでいる?

現場の弱体化は、製造業に携わる人たちの意識にも表れているようです。日経ものづくり誌が行ったアンケート(「弱体化する現場に危機感、先端技術と人の両輪で底上げ」、日経ものづくり、2017年7月号)によれば、「最近の5年間で日本の工場の競争力はどう変化したと思うか」という質問の回答で最も多かった答えは、「弱くなっている(55.2%)」でした。これに反して「強くなっている」と答えた人は、14.8%でした。また、弱くなっている点を質問したところ、第一位から「作業者の技能・技術力(60.6%)」、「生産技術力(45.7%)」、「作業者のトラブル対応力(37.9%)、「品質管理能力(33.9%)」「経営管理能力(32.5%)」との結果です。これは一例ですが、製造現場力の弱体化は確実に進んでいるようです。

現場力・経営体質を再構築すべき

今回の偽装問題は、最近急速に進んできたコーポレートガバナンス強化の流れにより、従来は問題にならなかったケースが表に出たという一面もあるかもしれません。実際、データ偽装の一部は数十年前からも慣習的に行われていたとの報道もあります。会社幹部の説明も、偽装は事実だが、品質には問題がないとのこと。

確かに、数十年前の、日本が製造品質を誇っていた時代にも、同じ事が行われていたのだから、今回の偽装問題はルールが守られていなかっただけで、品質には問題がない、と説明できるかもしれません。

しかし、先のアンケートにもあったように、現場の技術力の弱体化が見られる現在、このような説明はナンセンスでしょう。すでに原因を分析したように、問題の本質は、日本企業が、コーポレートガバナンスや、イノベーションの大きな潮流に乗り遅れ、その綻びが一挙に噴出してきたように思えます。日本のものづくり企業は、今回の状況を踏まえ、現場力や経営体質を再構築すべきではないでしょうか。

馬場孝夫

企業で「技術」と「経営」の融合を進める専門家

技術経営コンサルタント

馬場孝夫さん(ティーベイション株式会社)

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