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白票・棄権は選挙でどのような意味を持つのか?

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危険や白票は「最有力候補」に投票することと同一の効果

本稿執筆時(平成29年10月16日)現在、衆議院の解散総選挙における選挙戦が活発になっています。

選挙期間中でもあり個別の事項に言及することはできませんが、今回の選挙では選挙のあり方を含めて多種多様な意見を目にします。その中で、今回の選挙における意思表示として、あえて選挙を棄権し、あるいは「白票」を投じることで全ての候補者に対してNOという明確な意思を示すべきという言説も出ています。また、政局が混迷を見せる中で、選挙区で投票したい候補者がいない、という声も耳にします。特に若い世代を中心とした選挙への関心の薄さも相変わらずあるようです。

しかし、このような情勢だからこそ、選挙に行ってきちんと候補者を選び投票すべき、と考えます。

私は弁護士会の法教育委員会が実施する「主権者教育」で高校生等を対象に講演をすることもありますが、その中で「棄権や白票は最有力候補に投票することと実質的に同一の効果がある」ということを繰り返し指摘するようにしています。

その理由ですが、有力視されている候補者は、いわゆる「浮動票」が対立候補に流れない限り当選する可能性が高いといえます。そのような状況で「浮動票」が投票されず、あるいは白票(無効票)となった場合、有力な候補者が有効投票の多数を占めて当選する確率はさらに上がります。その意味で、棄権や白票は最有力候補者に投票することと同じです。棄権や白票は、最有力の候補者を消極的に支持した、と理解されるのです。

投票したい候補者がいないなら、戦略的な「批判票」を

では、最有力の候補者を支持したくないが、ほかに適切な候補者がいないという場合にはどうすればいいのでしょうか。

この場合には、近時強調されている「戦略的投票」ということが参考になります。これは、最有力候補者より幾分マシな候補者を選び、その候補者に投票することで最有力候補者を落選させる可能性を高め、また反対票を当選者に対して可視化する、という効果があります。

投票する候補者を積極的に支持できなくても、最有力候補者を落選させることで、よりマシな候補者が当選する可能性が出てきます。また、投票した候補者が当選しなくても、批判票が対立候補者に集まり当選した候補者の得票率が下がることで、当選した候補者に「次回は場合によれば落選するかもしれない」という危機感を持たせ、今後の活動において反対意見に目を向けさせる効果も期待できるのです。

投票に行かない人の中には、「どうせ投票しても結果は同じだから」という考えもあるかもしれません。しかし、選挙に行くことは、仮に投票した候補者が落選したとしても、批判票という形で投票者の考えを当選した候補者に伝えることができるのです。投票した候補者が当選しないから意味は無い、ということはありません。

また、世代別の投票率が低い場合、その世代に向けた政策が軽視される可能性があることも指摘されますが、紙面の都合で今回は省略いたします。

一部の「声の大きい人」の意見で動く世の中にしないために

投票する候補者が100%自分の考えを実現する政策を持っていることは普通ありません。そのような中で、「投票したい候補者がいない」というのは、一面では候補者側の問題ですが、有権者側も選挙に理想を求めすぎのような気がします。

イギリスの名宰相として名を残しているウィンストン・チャーチルは「選挙とは、今の世の中の状況で、ろくでなしのなかから誰に税金を分配させたら相対的にマシになりそうか、消去法で選ぶ行為のことだ」という趣旨の言葉を残しています。皮肉のきつい言い方ではありますが、この言葉が選挙の意味を過不足無く表していると思います。

あえて選挙を棄権し「選挙に意味は無い」ことを態度で示すことは、本人からしてみれば政治に対し批判的な意思表示をしたつもりでも、結果として現状の政治を是認する結果にしかなりません。全ての候補者にNOという意味で白票を投じることも、確かに投票率は上がりますが結局は無効票として扱われるため選挙を棄権することと同じ結果になり、政治や候補者に対して批判的な意思を示す効果はほとんどありません。

今の政治がおかしいと思うのであれば、「少しでもマシな候補者を消去法で選んで投票」するべきですし、その場合には多少の不満点があったとしても「鼻をつまんで」投票する、それが正しい投票のあり方だと思います。選挙に行かない人が増える結果として、この国の政治が一部の「声の大きい人」の意見で動かされるようになってしまう、そのような世の中にならないことを心から希望します。

半田望

市民の法律問題を一緒に解決する法律のプロ

弁護士

半田望さん(半田法律事務所)

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