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野良猫の殺害で問われる犯罪は?

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野良猫を虐待・殺害、警視庁が動物愛護法違反で逮捕

野良猫を捕獲して熱湯やガスバーナーで殺害したとして、動物愛護法違反の罪で、税理士の50代男性が警視庁に逮捕されたというニュースがありました。猫の虐待や殺害している内容の動画をインターネット上に公開していたことが事件発覚の端緒となったようです。

あくまで逮捕段階ですので有罪と決めつけるのは早いということはお断りさせていただいた上で、野良猫を殺害した行為がどのような犯罪に問われるのかについて説明します。

「動物の愛護及び管理に関する法律」(動物愛護法)では、「愛護動物」を正当理由なく殺したり傷つけた行為は、2年以下の懲役または200万円以下の罰金の刑の犯罪とされています(44条1項)。愛護動物には、猫や犬などが含まれます。

今回の事件では、この犯罪に問われているということになります。動物愛護法違反の罪が別個に複数認められ併合罪として加重されれば、最長3年の懲役の範囲で有罪判決が下されることになるでしょう。

他の犯罪でもっと重く罰せないのか

猫を残虐な方法で殺傷した行為について、上記の程度の法定刑では軽いのではないかという感想もあり得るかもしれません。

猫は人ではないので、刑法の殺人罪(死刑または、無期もしくは5年以上の懲役)や傷害罪(15年以下の懲役または50万円以下の罰金)に問われるわけではありません。また、野良猫は「他人の物」ではないため、刑法の器物損壊・動物傷害罪(3年以下の懲役または30万円以下の罰金)は成立しないでしょう。

報道を見る限りでは事案の詳細は分かりかねますが、その他の犯罪でより重く罰するというのは難しそうです。

無抵抗の猫を殺したことについて強い非難の気持ちが生じるのは当然なのかもしれません。しかし、数年あるいは数か月でも刑務所に行くというというのは軽い制裁ではありません。また、事実上の社会的な制裁もかなり厳しいでしょう。

今回の被疑者に対する社会的制裁

私は原則として逮捕段階での実名報道をすべきではないと考えています。しかし、現実には今回の被疑者についても実名で報道がなされています。住所や職業も報道されていますので、当人としてはこれまで通りの社会生活を営むのは不可能となったと思われます。

また、もし今回逮捕された税理士が動物愛護法違反で有罪判決を受けて懲役刑を科されることが確定した場合は、執行猶予の場合でも、税理士の欠格事由に該当しますから、欠格期間中は税理士の資格を失い、登録が抹消されます(税理士法4条6号、26条1項4号)。

今回の事件で被疑者となった税理士は、家族や友人関係、社会的信頼や営業基盤など多くのものを失ったのではないかと思います。虐待行為をしたのが事実であれば、その代償は相当大きかったのではないでしょうか。

中小企業をとりまく法的問題解決のプロ

林朋寛さん(北海道コンテンツ法律事務所)

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