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独占禁止法がビッグデータ独占にも適用か?

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データの独占も独占禁止法違反の対象に

公正取引委員会は不当なデータの収集や囲い込みを行った企業に独占禁止法を適用する考えを公表しました。近年、IoT(Internet of Things)の拡大やAI(人工知能)の高度化、SNS(会員制交流サイト)の普及などを背景に、個人情報を含む多種多様な大量のデータを収集し、高速で解析することで様々な商品やサービスが創出されています。

しかし、特定の企業に多くのデータが集まって独占状態になると、結果として競争を通じた技術革新や利便性が損なわれる可能性があります。また、利用者も他社に乗り換えることが難しくなります。そのため、公正取引委員会は独占禁止法を適用して介入する可能性を示したと考えられます。

欧州ではデータ独占に罰金も

欧州ではすでに米国大手IT企業に対するEU競争法(日本の独占禁止法にあたる)違反が適用されています。Amazonは市場での支配的立場を背景に電子書籍の販売に関する出版社との契約で競合相手と同等の待遇を求めるなどの条項を盛り込んでいたことが指摘された結果、当該条項を取り止める改善策の実施で合意しました。

Facebookは大手メッセンジャーアプリ会社であるWhatsApp社買収時の承認審査の際に不正確な情報を提供したとして約140億円の罰金を科されました。Googleも検索サイトで商品情報を調べた利用者に対して自社サービスの内容を優先して表示し、競合サイトを不利な状況にしたとして約3000億円の制裁金支払いを命じられました。今回の公正取引委員会の発表もこうした動きを踏まえて行われたと考えられます。

公正取引委員会が考える「データの独占」とは

公正取引委員会は「データと競争政策に関する検討会」でビッグデータの利活用を促す競争政策上の課題について検討してきました。その報告書の中で独占禁止法の適用可能性のある行為は以下の通りです。

1.不当なデータ収集
立場の強い企業が業務提携先の企業に対する一方的なデータ提供の要求は不公正な取引方法や優越的地位の濫用に該当すると考えられます。また、市場支配力の高いSNSで利用者が他サービスに切換えにくい場合、利用者に不利益なデータ収集項目の追加等は、私的独占や優越的地位の濫用等の適用可能性があります。

2.データの不当な囲い込み
企業が収集したデータを開示するか否か、開示する際の範囲設定等については、その企業の自由です。しかし、企業が収集するデータが特定の事業活動で必要不可欠かつ代替データ取得が困難な場合、当該データへのアクセス制限は私的独占や不公正な取引方法等に該当する可能性があります。

3.データの集積を伴う企業合併
大量データの集積、または収集経路を保有する企業との合併は、合併後企業にデータやデータ入手経路がより集中して競争を阻害し、データ価格の高止まり等の弊害が起きる可能性があるため、審査が必要となる場合もあります。

4.その他
データの提供とその解析などのサービスを抱き合わせた販売、データや解析技術を提供する代わりに競合他社との取引を行わないことの要求、等の行為は拘束条件付取引や排他条件付取引などの問題となり得ます。

国際的な協調の必要性

データ独占は談合等と異なり、独占禁止法に違反したかの判断は難しくなります。それは、データ収集手段となる検索やSNS等のサービスが無償提供されることに由来します。そこには競争阻害の判断材料となる価格が存在しないからです。

データの利活用は成長が期待される領域であり、競争環境の維持は重要です。データは国境を越えて流通するため、過剰な規制は成長を止めるばかりか、高度技術の流出にも繋がりかねません。国際的に協調してデータ独占の基準等を議論する必要があるでしょう。

ITの有効活用・コスト見直しに強いコンサルタント

金子清隆さん(デルタエッジコンサルタント株式会社)

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