自動車運転での死亡事故はなぜ罪が軽いのか?
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自動車運転事故の加害運転者の刑が軽いのではないかという声
自動車運転中のスマホ操作による脇見での死亡事故や高齢者の自動車運転事故が多発しており,加害運転者に対する裁判結果の報道を目にするたびに,結果の重大さに比べると刑が軽いのではないかと感じる方も多々おられることと思います。
そこで,刑事責任の重さを左右するものは何かということを解説してみます。
刑罰法令においては犯罪類型に応じて法定刑を定めている
刑罰法令においては,各犯罪類型に応じて法定刑を定めております。
どのような罪を犯そうと法定刑が同一ということではありません。
その第1の理由は,刑罰法令が守ろうとしている法益(保護法益)には種々のものがあることが挙げられます。
大きくは個人法益,国家法益,社会法益に区別されるのですが,例えば個人法益の中にも,人の生命や身体の安全といったものもあれば,意思決定の自由や財産権といったものなど様々なものがあり,法益としての価値にも違いがありますので,それらを侵害した場合の刑事責任の重さに違いが出てくるのは当然です。
第2の理由は,保護法益が同じであっても,行為の態様如何によっては,その行為に対する非難可能性に違いがあることが挙げられます。
同一の法益を故意に侵害した場合と過失によって侵害した場合とでは,前者の方がより強い非難に値するということ,すなわち前者の方が非難可能性が高いということは理解できるでしょう。
殺人罪の法定刑は「死刑又は無期若しくは5年以上の懲役」,傷害致死罪の法定刑は「3年以上の有期懲役」,過失致死罪の法定刑は「50万円以下の罰金」などと,同じ生命を侵害する罪であるにもかかわらず,法定刑にこのような差が設けられているのは,このように行為態様に違いがあり,非難可能性の程度に違いがあるからです。
非難可能性の程度に応じて法定刑も異なる
結局のところ,保護法益や行為類型によって,法定刑に差が設けられているのですが,このように犯罪ごとに定められている法定刑にも,上記の例にあるように一定の幅を持たせてあるわけです。
なぜなら,法益侵害の程度(被害の程度)や非難可能性の程度といったものは,具体的に発生した各犯罪ごとに異なっているため,ある程度の幅を持たさざるを得ないからです。
交通死亡事故で亡くなった被害者遺族の立場からすると,生命を奪われてしまったやり場のない怒り,悲しみから加害者を厳罰に処すべきであると言いたくもなる気持ちも分からないではないですが,交通死亡事故といっても,単純な過失によるものから飲酒運転によるものなど,非難可能性の程度に応じて異なる犯罪類型が規定されており,法定刑もこれに応じて異なっているということを理解する必要があります。
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