アルコール依存症の原因は?家族は治療に対してどう向き合うべきか
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アルコール依存症と診断されたら?どんな病気?
アルコール依存症とは、アルコールの量や飲むタイミング、状況を自分でコントロールすることができなくなってしまう病気です。この病気の特徴として、患者本人が「自分がアルコール依存症である」ということを自覚しないという点が挙げられます。自分で飲む量をコントロールできると思っているので、人の話を聞きません。
そのため、本人に自分がアルコール依存症であることを認識してもらうには、自分で病気だと認めざるをえなくなるまで、思い通りに飲んでもらうしかありません。飲んで問題がおきて苦い経験を繰り返さなければ「自分はお酒をほどほどに控えることができない」「もう断酒しかない」ということが理解できないのです。
また、残念ながら命にかかわる状態にならなければ行動に移せない、という人が多いことも事実です。
アルコール依存症になる量はビール500ml/日の3倍を目安に
アルコール依存症になる最大の原因は、アルコールの過剰摂取です。厚生労働省が推進している「健康日本21」では、「節度ある適度な飲酒」の量を示しています。働き盛りの壮年期の男性の場合は、1日ビール500ml(日本酒1合弱、25度焼酎であれば100ml、ワイン2杯程度)です。1日の飲酒量がこの3倍以上になると「飲みすぎ」であり、アルコール依存症になる恐れがあると述べています。
3倍とはどのくらいの量かというと、1日にビールのロング缶あるいは中瓶(500ml)3本、日本酒3合弱、25度焼酎300ml、ワイン6杯程度です。
この量は多いでしょうか?少ないでしょうか?これぐらいなら、ついつい飲んでしまうという人もいるのではないでしょうか?人により量に違いはありますが、それぞれの限度を超えて摂取することがアルコール依存症につながっていくことは間違いありません。
アルコール依存症の原因と傾向について
アルコール依存症になりにくい人はいませんが、なりやすい人の傾向はある程度わかっています。具体的には、次のとおりです。
【性別・年齢】
アルコール依存症にかかりやすい性別、年齢はありませんが、中年の男性が最も多くかかっていることは、今も以前も変わらない傾向です。しかし、最近では、若い女性の依存症も増加しています。これは、男性に比べ、同じ飲酒量であっても女性のほうが血中濃度が高くなりやすいことや、男性よりも飲酒による肝障害、うつといった精神科合併症を起こしやすいといったことが原因です。
【遺伝】
アルコール依存症の親を持つ子供は、ほかの子供に比べ、依存症になる確率が4倍も高いとされています。
【アルコール依存症以外の精神疾患】
うつや不安障害、注意性欠陥多動性障害といった精神疾患を持った人が、その不安を和らげる手段としてアルコールに依存することも、依存症になる原因の1つです。
【環境】
自分の周りにアルコールを摂取する家族、親戚、友人が多いことも、アルコール依存症にかかる傾向が高くなります。
では、アルコール依存症になってしまうとどんなリスクがあるのでしょうか?
アルコール依存症自体も1つの疾患ですが、アルコール依存症がほかの疾患を引き起こしてしまう可能性があります。アルコールを多量に摂取するため、急性アルコール中毒、肝臓病、すい臓病、循環器疾患といった疾患が挙げられます。これら以外にも、メタボリック症候群、認知症といった疾患の可能性も高まります。さらにアルコール依存との合併が多いのがうつで、これが進行すると自殺につながってしまうケースも少なくありません。
習慣飲酒などアルコール依存症と疑われる行動、そして末期
アルコール依存症への第一歩は、習慣飲酒です。機会があるごとに自らお酒を飲むようになり、少しずつ酒量が増加。機会がなくとも気分を高揚させるために飲むようになります。
習慣飲酒が続いていくと、お酒への精神依存が進んでいきます。生活のなかで飲酒が最も優先され、軽い酔いでは満足できなくなり、記憶の欠落、いわゆるブラックアウトも頻繁に起きるようになります。
続いて、お酒が切れると軽い離脱症状(微熱、悪寒、寝汗、下痢、不眠)が出始めます。これが依存症初期です。しかし、この時点では体調不良や風邪と思い込み、ほとんどの場合、まだ自覚症状はありません。
その後、次第に、お酒が原因となるトラブル、不注意、判断ミス、遅刻、欠勤、病気、けが、飲酒運転などが起き始めます。この段階になると本人もお酒を控えようと考えますが、なかなかうまくいかず、周囲に嘘をついて飲んだり、その嘘にうしろめたさを感じ暴力的になったりします。これが依存症中期です。
そして、そのまま飲酒を続けるうちに、お酒の量をコントロールしようとしてもできなくなり、一人で飲むことが増え、食事もとらなくなっていきます。アルコールが切れると不安やうつ状態に襲われるので、飲まずにはいられなくなるのです。ここまでくると、依存症後期です。連続飲酒発作、離脱症状による幻覚、肝臓やその他の疾患の悪化で、日常生活や仕事が困難になり、やがては家族、仕事、社会的地位などすべてを失い、最終的には死に至ることとなります。
アルコール依存症の治療方法は「断酒」ではなく「節酒」
仕事、家族、社会的信用など、ひどい状態になればすべてを失ってしまうことにもつながるアルコール依存症。しかし、この疾患を100%治癒させる薬はこの世には存在しません。そこで、重要になるのが「節酒」、つまり身体に害を及ぼすほどの飲酒を控えるようにすることです。
以前は、アルコール依存症になれば、断酒で完全にお酒を断つしかないと考えられてきました。しかし、アルコール依存症に一度でもなった人は、仮に断酒ができたとしても、後に少しでも飲めば、また元の依存症状態に戻ってしまう可能性が低くありません。
重度の依存症になれば、自分でコントロールすることはできないため、節酒ではなく断酒が必須です。ただ、依存症が初期段階であれば、節酒を治療目標とし、長期的な視野で治療を続けていくことが、依存症を治療するための心構えとなります。
具体的な治療方法としては、節酒であれば、薬物療法を中心に。重度で断酒が必要な場合は、薬物療法に加え、集団精神療法や認知行動療法といった心理社会的治療を組み合わせて行います。
アルコール依存症患者を持つ家族がするべきこと
アルコール依存症を治療し、克服するうえでもっとも辛いのは、患者本人であることは間違いありません。しかし、それを支える家族にも心身共に相当な負担がかかり、苦しい思いが強いられます。では、もし家族の誰かがアルコール依存症になってしまったら、家族はどう対処すべきなのでしょう。
家族がアルコール依存症になってしまった際、家族としてまずやるべきことは、本人に自分がアルコール依存症であることを自覚してもらうことです。本人の自覚がないままに、お酒を飲ませないことに力を注いでも、効果のないことにエネルギーを使うことになるばかりか、事態をこじらせ、自分自身が疲れてしまいます。
これを防ぐには、患者が起こしたトラブルに対し、家族が助けるのではなく、疾患であることを本人に自覚させ、自分で解決していけるようにすることを考えなければなりません。伝え方としては、家族が勉強して伝えてもよいですし、関連する本を読んでもらったり、病院などで専門家から話してもらったりするなど、状況に応じて最適な方法を選択するとよいでしょう。
アルコール依存症患者は、どんなことをしても飲もうとするため、隠れて飲んだり、飲むために暴れたりするようになります。ここで、無理に飲ませないようにしても、神経を逆なでして逆効果なだけです。また、飲酒したかを逐一チェックして、飲んだことを責めるのも避けたほうがよいでしょう。「嫌な事を言われたから」と人のせいにしてお酒を飲む口実にし、悪循環を引き起こすことになります。
断酒しようとしていても、監視の目で見られることになると、ストレスや孤独を感じ、かえってアルコールに手を出してしまうことになります。そのため、家族は辛いことではありますが、病気を理解してじっと見守ることが必要です。
患者のケアと併せて家族のケアも忘れずに
しかし、長年アルコール依存患者を抱えていると、家族は精神的に疲れ切ってしまいます。そのため正しい知識を学ぶと同時に家族自身の心のケアも必要となります。専門医療機関の家族教室や、自助グループの家族会、セミナーなどに参加して、自分の被害者意識や不信感を克服しながら仲間の中で学びましょう。世間の目を気にするのではなく、ありのままの自分で安心できる人間関係を築くことが大切です。
また、アルコール依存症の怖いところは、体だけでなく心も病んでしまうことです。人に迷惑をかけず、自立した生活を送りたいと断酒の決意を見せた矢先に、お酒を飲んで攻撃的な言動を繰り返し、開き直って飲酒したことを正当化するといったことは珍しいことではありません。
家族の多くは、アルコール依存症患者のそのような姿を見て混乱し、絶望を感じます。しかし、それらの患者の言動に振り回される必要はありません。病気が言わせている、やらせている言動に対しては、相手にせず、巻き込まれないようにすることが大切です。病気を治すには、正常な部分と病気の部分を区別して、見極めることが必要です。
責めたり非難したり、説教しても、患者の状況は決して良くなりません。人間関係が悪くなり、さらに追い込んでしまう場合もあります。何よりも、変えることのできない現状に、不安や怒り、恨みが募り、家族の側が心身ともに疲弊してしまうのです。
アルコール依存症は家族だけで抱えず専門職や専門機関の活用を
自分の身を守るためには、相手を認めることも必要です。自分のために、「アルコール依存症患者はどんな気持ちなのだろう」と相手の立場で考えてみましょう。不安を抱えたままでは何も状況は変わりませんので、アルコール依存症について勉強したり、家族会に出席するなどして、これから先をよくするために、自分で行動してみてください。
自分の人生で一番大切なのは自分自身です。病気になった家族でもなく、環境でもありません。過去や環境は変えられませんが、自分自身のこれからの人生は自分で選ぶことができます。幸せを感じるのも、恨んで生活するのも自分次第です。どんな環境の中でも生きがいを見つけることは可能です。
大切なのは、どう考え、どう行動するかです。自分が生きがいのある人生を送れるかどうかは、考え方や行動の仕方で決まります。誰のためでもなく、自分自身のためにあきらめないで勇気を持って行動してください。
アルコール依存症は、早期に治療するほど失うものが少なく、「回復する病気」です。大切なことは「治したいと思う心」「回復した人との交流」「前向きな努力を続けること」。
さらに欠かせないポイントは、アルコール依存症を隠そうとして家族だけで抱え込まず、保健所、精神保健福祉センターに相談したり、専門医療を受けられるところを探したりすることです。
本人が助けを求めない以上、家族が周囲に適切な介入を求め、専門家や専門機関のサポートをうまく利用することが重要だといえるでしょう。
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