刑法改正?性犯罪厳罰化は抑止力になるのか?
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性犯罪に関する刑法改正が閣議決定
昨年から検討が進められていた性犯罪に関する刑法改正について、3月7日に閣議決定がなされました。
法案となるのはまだ先ではありますが、皆さんにとっても大事な問題なので説明します。
今まで意識されなかったかもしれないのですが、これまでの強姦罪の被害者は女性だけでした。
男性には身体機能上「姦淫」できないでしょうということだったわけです(男性でも本来自分の意思に反して身体上性交可能な状態にされ、姦淫されるという話も耳にしますが、ここでは省略します。)
姦淫と言うと分かりづらいかもしれませんが、被害者の承諾のない性行為に限られており、これまではフェラチオやアナルセックスを強要された場合はこれまでは強制わいせつ罪として捉えられていたわけです。
自分の性行動を自分の意思で決める権利は人間の尊厳に直結します。
性行為でなければこの人間の尊厳を踏みにじられることはないかというとこういったフェラチオやアナルセックスを強要されたらやっぱり性行為がなくても十分匹敵する思いを受けるじゃないかというのが改正の出発点です。
人それぞれ思うところはあるかもしれませんが、私はこれには賛成です。
性犯罪が厳罰化へ
次の改正点は法定刑の厳罰化です。
他の犯罪と合わせても罪が軽すぎやしないか、これは先ほどの人間の尊厳を踏みにじるということをもっと考えるべきというのが出発点です。
また、非親告化するというのは被害者の告訴の有無にかかわらず立件し、裁判に付すことができるということです。
性犯罪の被害者の相談も、加害者の弁護もしている私が考えるに、法定刑の引上げそして非親告罪化によって事実上何が変わるだろうと思ったときに、警察署がもう少し真剣に被害者相談に取り組むかなということでした。
限られた人的リソースを捜査に当てるときにどうしても重大犯罪は優先されます。
重大犯罪かどうかは法定刑や被害の大きさなどで判断されるのでしょうが、個人の強姦被害に関しての対応は残念ながら処理速度にしても「後回し」感を感じることは少なくありません。
被害者は当然思います。
「私はこれだけ辛いのに、警察には『後回し』レベルなのだ」と。
これが厳罰化されることによって変わる、ということなのでしょうか。
一方、弁護人としての経験から性犯罪の性質を考えてみるに、「長いこと刑務所に行っても解決はしないでしょう」とも思うのです。
確かに性犯罪を犯した者に対するプログラムは刑務所の中で行われています。
しかし、出所支援している中で聞く本音は「仮釈放に有利だから出席した」というもので、性犯罪を二度と犯したくないという動機付けに欠けてしまうのが一番の問題です。
そういう意味で重罰化が再犯防止に繋がるかといえば、制度上の限界があるなというのが生の実感です。
監護者によるわいせつ行為についての罪を新設
三番目は監護者、つまり親等子の面倒を見ている人によるわいせつ行為についての罪を新設したことです。
いわゆる暴行や脅迫がなくとも、「従わないなら出て行け」という大きな立場の差を利用した性的虐待は実際に行われています。
非親告罪となり、子の告訴という負担が軽減されたことは評価できます。
いずれにしても大事なことは「いかに被害者の苦しみを取り除くか」、「いかに加害者が性犯罪へのスイッチを切るか」これに尽きます。
この点を忘れずに関わる側が動かなければ、重罰化は刑務所にいる間の予算の増加に終始するだけです。
今一度、みなさんにも考えていただければと思います。
身近な相談相手として、問題を解決できる女性弁護士
白木麗弥さん(ハミングバード法律事務所)
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