職場での上司への不満。相談は誰にどう伝え、解消するべきか
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ビジネスを円滑に進めるためにも、上司との関係は良好でありたいものです。ところが会社で感じるストレスの多くが、上司への不満が占めています。誰にどのように相談すればいいのかわからない上司との関係。上司への不満の対処法についてお話します。
上司に不満を感じない人はいない?9割が上司に不満を持っている
職場は1日の大半を過ごす場所です。気の合う同僚や理解のある上司と出会い、互いに尊敬し合いながら楽しく仕事がしたい。それは多くの働く人たちの願いではないでしょうか。しかし、なかなかそうはいかないのが現実のようです。
厚生労働省の調査によると、「仕事や職業生活に関する不安・悩み・ストレスの内容」の第1位は、「職場の人間関係の問題」で41.3%です(平成26年版厚生労働白書より)。
この数字からも、多くの人が人間関係に悩みを抱えていることがわかります。特に上司との関係は、自分の仕事の評価や将来の昇進・昇格にも関わる可能性があるので深刻です。働く人の約9割が「上司に不満を持ったことがある」、5割を超える人が「上司と飲みに行きたくない」との調査結果もあります。
上司への不満ランキング トップ5
不満を感じる上司とはどのような上司でしょうか。あるアンケート調査で浮き彫りになった「上司への不満ランキング」をご紹介します。
第1位「人として尊敬できない」
・ 何かと嫌みや小言を言う。
・ 常に威圧的な態度を取る。
・ 部下の話を聞こうとしない。
・ 言うことが二転三転する。
・ 失敗を部下のせいにして手柄は自分で独り占めする。
第2位「業務に関する指示や命令が不明確」
・ 何を指示しているのかわからない。
・ 指示内容が後から変わる。
・ 指導やフィードバックの不足。
・ 理由や状況説明なしで結論だけを短絡的に話す。
・ 話しかけられることもないので改善の仕方すらわからない。
第3位「感情的になって怒ることが多い」
・ 突然、烈火のごとく怒鳴り散らす。
・ 不必要なほどの批判的な態度。
・ 不適切な言動。
・ いじめを受けているように思える。
・ 部下に厳しく冷酷過ぎる。
・ パワハラに対する意識が低い。
第4位「えこひいき・相手によって態度を変える」
・ コミュニケーションの取り方に違いが見え過ぎる。
・ 残業や仕事の割り当ての差があからさま。
・ 人事評価がフェアではないと感じる。
・ 好きな部下ばかりかわいがる。
・ 上にへつらい、下には威張る。
・ 不快になるほどの上へのご機嫌取り。
第5位「性格の不一致」
・ 根本的に気性が合わないと感じる。
・ 生理的に無理とはこのこと。
・ 業務に無関係な理由で降格されそうで怖い。
まだまだありそうです。こういう上司の下で仕事をするのはストレスを感じるものです。しかも毎日繰り返されてストレスが蓄積されていけば、モチベーションも下がり、メンタル不調の原因にもなりかねません。
上司に不満を抱えたままでは解決しない。「あの人だって法」で自分の考え方を変える
上司に不満や本心を話すのはとても難しいことです。そもそも部下に心を開かせる才覚のある上司ばかりなら、不満を持つこともないのかもしれません。先のアンケート調査で「上司に不満をぶつけたことはあるか」との質問に、64%の人が「ない」と答えています。不満を訴えなかった理由は、「気まずくなるのが嫌だから(56.4%)」「適切に解決されると思えないないから(42.5%)」などです。部下は期待を持たず、あきらめている様子がうかがえます。
では、「嫌な上司」がいたら、どうすればいいでしょうか。「上司に考えや言動を改めてもらう」と言いたいところですが、残念ながら他人を変えることはとても難しいです。ましてや自分よりも年上の人や立場が上の人を変えることは、簡単ではありません。通常、人が変えることができるのは「自分」だけ、他人を変えることはできないと言われています。
他人を変えようと思わずに、自分の考え方を変えてみましょう。
おすすめの方法は、名付けて「あの人だって法」です。嫌な相手のことを「いやだ、きらいだ」と思うかわりに、「あの人だって○○だろう」と、同情したり共感したりする言葉を言ってみてください。例を2つ挙げます。
【例1】
部長:「俺の言うとおりにしないなら評価を下げるぞ」
あなた:(心の中で)「部長だって、自分の上司に同じように言われ続けてきたのだろう」
【例2】
部長が部下の手柄を独り占めし、自分の指示が良かったから成功したのだと会社にアピールをした。
あなた:(心の中で)「部長だって、会社から気に入られたくて必死なのだろう」
いかがでしょうか。心からそう思えなくてもいいのです。無理やりでもいいから、「あの人だって○○だろう」と言ってみることで、自分の気持ちが少し落ち着き、イヤな相手にも同情の気持ちが持てるようになるものです。発想を少し変えるだけで、上司との関わり方がグッと楽になるので試してみてください。
上司への不満を聞いてくれる人はいますか?心の内を相談することの重要性
さらにおすすめなのは、「あの人だって○○だろう」の話を、心の中だけでなく、誰かに聞いてもらうことです。
「人に話す(はなす)」=「心を放す(はなす)」です。メールやSNSでやりとりするのではなくて、声に出して話すことが重要です。力を抜いて話せる相手、信頼できる同僚や友人、家族などに聞いてもらいましょう。この時点では、問題解決を求める必要はありません。じっくりと気持ちを聞いてもらうだけでいいのです。
一見ダラダラと愚痴をこぼしているようでも、話しながら問題が整理できていくという効果もあります。抱えている不満を受け止めてもらうことで、「自分が悩むほどのことではなかった」と思えるようにもなります。自分では気づけなかったことを、相手が見つけ出してくれる場合もあるでしょう。会話をすると心が軽くなり、気分がスッキリして視界が変わり、考えがまとまったりするものです。
ところが残念なことに、男性の約35.7%、女性の約21.3%が、「不安や悩みを相談する相手がいない」そうです(平成26年版厚生労働白書より)。
日頃から、悩みを互いに相談し合えるような人間関係を作っておくことは、自分のメンタルを健全に保つためにとても重要です。家族や友人、同僚などとの交流を大切にして、悩みがあるときには遠慮せずに話をして聞いてもらいましょう。
上司への不満を改善するためには、社内の誰にどう伝えるかが問題
「朝から上司の顔を見るだけで憂うつになり、転職すら考えてしまう。でも、今の仕事・会社が好き」という場合。問題が上司のことだけであるならば、何かしらの手だてを考えるために、今一度、ポイントを絞って確認してみましょう。
・上司の存在が今、自分にとってどのようにマイナスなのか。
・好き嫌いは別として、上司は仕事力のある人なのかどうか。
・上司の社内での人間関係は良好か、周囲にどのような評価を受けているか。
客観的に相手を見つめることで、自分がどうすべきかが明確になり心が決まることもあるでしょう。しかし、会社にとどまりたいけれど自分で解決する方法がわからない場合は、人事担当に相談することでよい方向に進む可能性もあります。会社が希望を聞いてくれるなら、違う部署への異動をお願いする方法があります。人事部や異動先の部署のキーパーソンとなる人に話してみましょう。直属の上司以外に「仕事の悩みを相談してはいけない」というルールはありません。今の上司の上か、多部署の上司か、周囲の人たちの指示を得るのも仕事術のひとつです。あなたの仕事ぶりを評価してくれている人なら、何かしらのアクションを期待できるかもしれません。
ただし今の上司に妨害される事態は避けたいので、慎重に進めましょう。「〇〇さんが上司をよく思っていない」など、ストレートに本心が伝わってしまうことを想定して、相談相手を選ぶのがポイントです。
また会社という器は同じでも、職場環境は仕組み上、変わる可能性が高いです。2〜3年すれば上司が変わり、解決に至るかも知れません。会社は仕事の能力が高い人の話を無視しません。将来的に同じような構図にならないためにも、自分を知る努力を怠らず、有利な人間関係を築き、必要なスキルを磨きましょう。
上司への不満をためてストレス過多になるとモチベーション低下につながる
嫌な上司と1日過ごした後、家に帰ってもまだイライラが募るといった経験はありませんか?最近の研究で、職場の上司から受けるストレスはプライベートにも影響すると言われています。上司への不満を増幅させて帰宅すると、普段なら何でもないささいなことをがまんできなかったりします。これを毎日繰り返していたら、家族や気を許している友人、恋人にストレスの矛先を向けてむけてしまい、不快な思いをさせてしまうこともあります。自分が大切にしている人たちを傷つけてしまい、自己嫌悪に陥ってしまうこともあるでしょう。
日々のストレスが蓄積されることでモチベーションが低下し、メンタル不調の原因にもなり得ます。こんな時は、ワンクッションおくことが大切です。仕事の後に通えるような趣味や活動を持つと気分が変わり、リラックス効果も高まります。スポーツジムに通うなど、適度なエクササイズで心と体を解放するのもおすすめです。
ひとりになれる時間を作って、瞑想やリラクゼーションを取り入れるのもいいでしょう。
上司への不満にとらわれず、自分を変えること、味方になってくれる人を持つことが大切
「嫌な上司」も冷静に考えてみると、自分の人生の中でそれほど大きな存在ではないはずです。今のマイナスの状況をいかにプラスに変えるかを考えてみましょう。不満だらけの上司でも、何かしら自分の役に立っている場合があるからです。
・ストレスや緊張感を抱えながらも、上司によって何かしら鍛えられているとしたらどうでしょうか。
・嫌いな人と適度な距離を保ちながら接することで、自分の人間力が育まれると考えてはいかがでしょう。
・尊敬できない上司が自分の仕事の裁量を大きくしていると、発想転換するのもいいでしょう。
・上司に比べて自分はまだ若いから、今のつらい経験をきっと生かせる機会がやってくると念じてみましょう。
・嫌な上司を反面教師にすれば、「気の毒な人だな」という同情の気持ちがもてるようにもなるでしょう。
また、今の上司のようにどうしても合わないタイプに当たったあと、次の出会いはきっと「良い人」である可能性もあります。自分のやるべき仕事をこなし、スキルアップやキャリアアップに集中しましょう。そして周囲の人たちとたくさん会話をして、良い人間関係を築きましょう。自分を応援してくれる人がたくさんいれば、「嫌な上司」は怖くありません。
元エンジニア、IT業界に強いキャリアコンサルタント
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