自宅や老人ホームでの看取り率に自治体間で大きな差 そのワケは?
看取り率に地域格差
厚生労働省研究班の調査で、病院ではなく自宅や老人ホームなど生活の場で亡くなる人の割合が自治体間で大きな差があることがわかりました。
その数は、2014年の全死亡者から事故や自殺などを除き、「看取り率」として算出したもので、人口20万人以上の自治体間格差は約3倍、3万人以上20万人未満では約13倍の開きがあったようです。
その背景には、在宅医療・介護体制の違いがあるとみられ、「最期は自宅で」の望みがかなうかどうかは、住む場所によって決まる実態がうかがえます。
各市町村での看取り率、その実態は・・・
この調査は、人口動態調査(14年)の全死亡例を基に、自治体ごとに病院や自宅など、どこで亡くなったのかを分析しています。
孤立死などを除外できなかった部分もありますが、より看取りの実態に近い数値のようです。
データの中身にも地域格差があるようですが、全国1504市区町村の集計では、病院の看取り率が78・6%、自宅や老人ホームなどでの「地域看取り率」は21・4%でした。
また、12年度の内閣府調査で、最期を迎える場所に自宅や老人ホームなどを希望した人が6割を超えているのと比べると、希望と現実に違いがあるのがわかります。
市区町村別の地域看取り率をみると、人口20万人以上では神奈川県横須賀市が35・4%で最も高く、最も低い愛知県豊田市は11・6%。
3万人以上20万人未満の最高は兵庫県豊岡市の43・5%、最低は福岡県岡垣町の3・3%でした。
「看取り」を実施する上では、在宅医療体制の充実が不可欠となりますが、訪問診療の実施件数の調査では、各市町村で大きく開きがるようです。人口規模がほぼ同じ市町村での訪問診療の件数を調査した結果では、約6.4倍もの格差があったようです。
このような結果から、研究班は看取り率の差の背景に、「往診を行う診療所の比率」など、在宅医療体制の違いがあるとみています。
地域格差の理由は、「医療(病院)と介護の連携」
今後も、自宅で生活を続け、最期を自宅や老人ホームで迎え、穏やかな死を迎えることを希望される方は、ますます増加すると思われます。
また、終末期に延命治療を望まない人が増え、自宅で最期まで過ごしたいと願う人は増加する一方、厚生労働省は病院の病床数を削減する方針で、2025年までに、自宅や介護施設で長期療養する高齢者らが約30万人増えるとの見通しもあり、安心して死を迎えられる体制作りは急務となります。
そのためにも、在宅医療体制による「看取り」の充実が必要となります。
しかし、在宅生活を支えるためには、医療(病院、診療所等)、家族はもちろん、介護事業所や地域住民の連携を強化することが不可欠となります。
すなわち、厚生労働省が提案する「地域包括ケアシステム」こそが、各自治体が中心となり、医療と介護、地域が高齢者の在宅生活を支えるシステムとなり、最期まで自宅生活ができる「看取り率」の向上に繋がるのです。