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少年法の適用年齢を18歳未満へ その是非は

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少年法の適用年齢を18歳未満へ

今月、金田法務大臣は、少年法の適用年齢を現行の20歳未満から18歳未満に引き下げることを含む論点について、法制審議会に諮問しました。
少年法の適用年齢の引き下げについては、少年による凶悪事件が発生するたびに議論されます。
また、一昨年の6月には選挙権を18歳以上とする改正公職選挙法が成立し、その附則の中で、少年法との関係についても検討するとされていることも、議論に拍車をかけています。

選挙権の行使年齢と少年法の適用年齢を一致させる必要はあるのか

しかし、この問題には客観的な統計データなどに基づく冷静な議論が必要だと考えます。
そもそも、選挙権の行使年齢と少年法の適用年齢を一致させる必要はありません。
前者は、若者の政治参加を促す趣旨であり、後者は少年の更生や再犯防止の見地によるものですから、別個に判断されるべきものです。
そもそも、成人年齢が問題となる法律は少なくとも200本以上あるのであって、少年法だけを取り上げて選挙権との一致を問うことも不自然です。
たとえば飲酒・喫煙が自動的に18歳に引き下げられるわけではありませんし、他方現在15歳でもできる遺言が18歳からしかできなくなるわけでもありません。

少年事件が近年急激に減少している事実

そして、実は少年事件は近年急激に減少しています。
日弁連が2015年に行った調査によれば、少年事件は当時11年連続で減少しており、少子化の影響を除外するため、少年人口あたりの発生件数でみても、1983年のピーク時の63.8%も減少しています。
また、少年法の適用年齢の引き下げで問題となる18歳、19歳の少年事件ですが、驚くべきことに、そのうち殺人や殺人未遂の割合は0.03%、傷害致死も0.02%に過ぎません。
非行事件の半数以上は自動車運転過失致傷と道交法違反事件が占めています。
しかも、殺人事件などの重大犯罪については、現行法でも成人と同様に裁判員裁判で審理がなされますし、その是非はともかく、たとえ18歳であっても法律上死刑に処すことも可能なのです。

少年法の適用年齢が引き下げられても特別な配慮は不可欠

このような客観的事実のなかで、あえて18歳、19歳を少年法の適用から除外するメリットとはどのようなものでしょうか。
むしろ、被疑者本人が単なる捜査の対象でしかない成人事件と、少年鑑別所のなかで、様々な科学的調査のアプローチがなされる少年事件とのあまりに大きな手続の違いを日々目にしている立場からすれば、心配の方が遥かに上回ります。

2014年のデータによれば、少年事件に占める18歳、19歳の割合は実に約47%にも及びます。
そして、その大半が重大犯罪ではないことは前述のとおりです。
これらの膨大な数の非行事件が、現在の少年鑑別所技官や家庭裁判所調査官などによる、事件の背景や生育環境等による緻密な科学的調査の対象から外れ、成人事件と同様に粛々と刑罰を適用するだけの手続になったとしたらどうでしょうか。
再犯防止の見地からだけみても重大な問題が生じるのではないかと危惧します。

そのため、仮に少年法の適用年齢が18歳未満に引き下げられた場合でも、これらの年齢の事件に対する特別の配慮は不可欠です。
ドイツなどでは、18歳未満を少年と定義しながらも、18歳から20歳を「若年成人」と位置付けて、少年裁判所法を適用できることとしています。
日本でもそういう制度設計は最低限不可欠でしょう。

交通事故と債務問題のプロ

永野海さん(中央法律事務所)

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