なぜ日本と犯罪人引渡し条約を結んでいる国が少ないのか?
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犯罪人引渡し条約とは?
犯罪人引渡し条約,というものがあるのをご存じでしょうか。
これは,日本で犯罪を行った者が外国に逃亡し外国の警察に逮捕された場合,逆に外国で犯罪を行い日本に逃亡した者を日本の警察が逮捕した場合,当該国から外交ルートを通じて身柄の引渡しを求められた場合に,一定の要件の下,身柄を引き渡す手続を定める条約です。
日本では「逃亡犯罪人引渡法」により,日本で逮捕した被疑者を引き渡す際の手続等が定められています。
同法では政治犯や犯人が日本国籍を有する場合など,引渡しをしない場合が定められており,また条約を結んでいない国への引渡しの可否を含め,最終的に引渡しを行うかどうかは東京高等裁判所が審査する,とされています。
逆に,日本で犯罪を行って国外へ逃亡した被疑者については,相手国と日本が犯罪人引渡し条約を締結していない限り,原則として引渡しがなされないことになります。
日本と犯罪引渡し条約を締結しているのはアメリカと韓国のみ
現在,日本との間で犯罪人引渡し条約を締結しているのは,アメリカと韓国の2カ国のみです。
被疑者が条約締結国以外の国で逮捕された場合,日本への引渡しではなく,その国の法律で刑事責任を追及する「代理処罰」を要請することが多い,と言われています。
犯罪人引渡し条約は,国際的には多くの国が相互に条約を締結しており,一例として米英では各国とも約110カ国,欧州各国も数十カ国程度,中国や韓国も約30国程度となっており,日本の条約締結国は際だって少ないと言えます。
なぜ日本での犯罪人引渡し条約の締結が少ないのか?
では,なぜ日本での犯罪人引渡し条約の締結が少ないのでしょうか。
これについては,専門の研究者の意見として,日本は島国で出入国管理体制が他国と比較しても厳格であり,外国の犯罪者が逃亡してきたり,日本の犯罪者が国外へ逃亡する事例が少なかったことがある,と言われています。
しかし,もっと大きな理由として,世界的に死刑制度を廃止する中,日本が死刑制度を残していることから,重大事件について日本に身柄を引き渡すと死刑とされる可能性があることに対し,欧州諸国を中心に根強い抵抗感がある,とも言われています。
条約を結ぶと日本に引き渡して死刑になるので,条約を結ばず死刑を採用しない自国法で代理処罰をするほうが人道的に望ましい,ということだと思われます。
近年,日本でも死刑の存否について議論がなされていますが,法律家の中でも意見が大きく分かれる部分であり,また国民感情からみても直ちに死刑を廃止することは現実的ではないといわざるを得ません。
他方で,海外への行き来が容易になり,これまで以上に犯罪人の処罰についても国際的な協調が求められることも指摘されています。
研究者からは,死刑の対象となりうる容疑者は引渡し対象から外す特例を作るなどして,日本側も条約締結に向けた努力が必要であるとの提言もあります。
筆者も,犯罪人引渡しについても日本が世界から孤立しないよう,当面は何らかの施策を考えることが必要であり,いずれは犯罪人引渡し条約の観点からも死刑の問題を考えなければいけない,と思います。
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