社会保障見直し 高齢者の医療費負担増へ
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高齢者の医療費自己負担上限額の引き上げへ
厚生労働省は、2017年度以降の社会保障制度の見直し案のひとつとして、70歳以上の高齢者が支払う医療費の自己負担上限額を引き上げる方針を固めました。
医療機関や薬局の窓口で支払う自己負担には、所得等に応じて1か月の上限額(自己負担限度額)が設けられており、1ヵ月に支払った自己負担の合計がその上限額を超えると、超えた部分が払い戻されるという「高額療養費」という制度があります。
70歳以上の場合この上限額が70歳未満より低く定められていますが、厚生労働省の案は70歳以上でも住民税課税世帯についてはこの上限額を引き上げ、そのうち年収370万円以上の現役並みの所得者については70歳未満と同水準に引き上げるというものです。
入院して医療費が月100万円かかったと仮定すると、現在は70歳以上であれば現役並み所得であっても自己負担の上限は87,430円ですが、これが所得に応じて変更され、年収1,160万円以上だと254,180円となります。
年収370万未満の住民税課税世帯であれば自己負担の上限は現在の44,400円から57,600円になります。
増え続ける社会保障給付費と伸び悩む保険料収入
このような見直しが必要となる理由としては、やはり急速に進む高齢化の影響で社会保障給付費が増え続けていることにあります。
社会保障給付費の8割ほどを保険料収入で賄うことができていた時期もかつてはありましたが、近年は勤労世代の賃金の伸び悩みなどで社会保険料の収入は横ばいの状態が続いているため給付と収入の差額は拡大傾向にあり、2014(平成26)年度をみると社会保障給付費は約112兆1,020億円、保険料収入は65兆1,513億円となっています。(国立社会保障・人口問題研究所「平成26(2014)年度 社会保障費用統計」)
この給付と収入の差額は公費(主に税金)で負担することとなります。
保険料は高齢者も支払いますが、納税者の多くは現役で働く勤労世代です。
公費による負担増とは、勤労世代の負担増といえるかもしれません。
今後さらに少子高齢化が進行し勤労世代の割合が減少することが予想される中で、年齢を問わず負担できる能力があるものが負担を分担しなければ将来的な制度の維持が困難になりかねませんし、この見直しはやむを得ないものと思います。
付け焼刃的な見直しはもう限界
これまでも収支均衡や予算削減を目的に、たびたび保険料率の引き上げや自己負担割合の引き上げなどが行われてきました。
しかし、度重なる負担増は「今後も負担が増えるのでは」と制度に不信感を抱かせる結果となりかねません。
付け焼刃的な見直しを繰り返しても、その効果は一時的なものです。
将来的に制度が信頼され維持されるよう、政治には目先の選挙を気にした議論ではない長期的視野に立った議論を期待したいと思います。また、我々国民も「負担増は嫌だが給付は手厚く」は無理であることを理解し、年代を問わず痛みを分かち合う覚悟が必要です。
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