介護保険料自己負担限度額引き上げで懸念される介護離職の増加
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介護保険料の自己負担限度額引き上げを政府が検討
消費税の増税も見送られ、介護保険の財源が問題になっていることは報道などでご承知かと思います。
超高齢社会の日本では毎年、介護保険料が5,000億円自然に増えています。
厚生労働省や財務省は介護保険料の自然増は認めていますが、それ以上の保険料の増加に対しては厳しい姿勢でいます。
介護保険料を抑制するには2つの方法があります。
一つは介護事業者へ支払われる介護報酬を削減することです。
平成27年の介護報酬改定で大幅に介護報酬が削減され、倒産する介護事業所が過去最高のペースで増えています。
もう一つは、ご利用者の負担割合を引き上げることです。
これも平成27年8月より一定以上の収入がある世帯は2割負担になりました。
全体の約25%の高齢者がこの対象になったといいます。
そして現在更なる負担割合引き上げが検討されています。
住民税が課税されている一般的な所得層の自己負担限度額を7,200円上げることが提案されました。
ただし、これはあくまでも負担限度額の増加です。
あまり介護保険サービスを利用していない高齢者には負担増はありません。
私の個人的な意見ですが、介護保険サービスを限度額ギリギリまで使っている方の負担増は仕方がないと思います。
40歳以上の人は毎月介護保険料を支払っています
介護サービス回数に関係なく同じ額を負担しているので、介護サービスをたくさん使っている人にはそれなりの負担をしてもらうべきだと思います。
厚生労働省は今後、介護保険の自己負担割合を全員2割に引き上げることを検討しているとの話もあります。
財源の確保と言う視点で言いますといたしかたないことだとは思いますが、もし自己負担割合が2割以上になった場合、どのようなことが起きるでしょうか?
介護保険料引き上げで懸念される介護離職の増加
現在、在宅サービス(自宅に住みながら介護サービスを受けている高齢者)で一番利用されているのは通所介護(デイサービス)です。
デイサービスとは入浴や食事・機能訓練・カラオケなどのレクリエーションを提供する事業所のことを指します。
デイサービスを利用する理由で多いのが「自宅から外出する機会がないため、安全に外出する」ということです。
行き帰りは車での送迎もありますし、介護職員が介助しながら移動します。
イベントをやっているデイサービスも多く、お花見やショッピングなどに連れて行ってくれる事業所もあります。
足腰が悪いため家にいることの多い高齢者がデイサービスに通いだすと、体も心も改善されることがよくあります。
ただし、もし自己負担割合が2割になった場合、今までの倍の利用料を支払わなければならなくなり、利用回数を減らす方も増えてくることが予想されます。
そうなるとどのようなことが起きるでしょうか?
結論から言えば、安倍政権が掲げている「介護離職ゼロ」政策と矛盾し、親の介護を理由に退職せざる負えない人は確実に増えるでしょう。
なぜかと言うと、例えば今まで週3回デイサービスに通っていたご利用者が週1日に減らしたときに、どのようなことが起きるかを考えるとわかります。
まず外に出る機会が減るため、ADL(日常生活動作)レベルの低下が進みます。
ADLが低下すると転倒も増えます。
高齢者が夜トイレに行こうとして廊下で転倒し、大腿骨骨折で3か月入院し、今までと同じ生活ができなくなってしまうというのはよくあるケースです。
そうなると夜も家族がトイレに付き添わなければならなくなります。
家族は心身ともども疲弊し、仕事を辞めるか施設に入所させるかの選択になってしまいます。
厚生労働省が推進している「地域包括ケアシステム」とも矛盾していきます。
介護保険行政は大きな転換期に差し掛かっている
介護保険行政は大きな転換期に来ています。
今までと同じことをしていると財政は破綻します。
しかし、介護報酬を下げ過ぎると事業者が倒産し、介護難民がでます。
介護難民が出ると、家族が24時間見るしかありません。
高齢者問題は、今は関係ないと思っている方も多いと思いますが、人間は必ず老います。
その時になってから考えては手遅れです。
今こそ国を挙げての議論が必要だと思います。
介護の開設支援・経営コンサルタント
松長根幸治さん(北斗パートナーズ株式会社)
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