腰が曲がるのは病気!?原因と日常での予防法とは?
腰が曲がるのはなぜ?病気としては脊椎後弯症という名称に
昔話などによく登場する、杖をついて背中が丸まっているおじいさん、おばあさんの状態を「腰曲がり」と呼びますが、正式名称は「脊椎後弯症(せきついこうわんしょう)」といいます。本来、背骨は横から見たときに、ゆるやかなS字を描いているのが正常な形です。しかし、日常生活のクセや加齢、病気など何らかの理由で背中の骨が大きく曲がり、上体が前に倒れ腰が折れた状態になってしまうのです。
脊椎後弯症の人が訴える症状として最も多いのは、「痛み」です。曲がっている背骨周辺や、神経にさわることで起こる足の痛みが主な自覚症状となります。腰の曲がり大きいと強く痛む傾向があり、長時間にわたり同じ姿勢を続けることが難しいという人もいます。痛みなどの症状ではありませんが、腰が曲がっているため顔が下を向いてしまい、前方向が見にくいといった悩みもあります。
腰が曲がる原因は加齢と姿勢に
腰が曲がってしまう原因として、主に以下の3つが挙げられます。
①加齢
自然な老化現象の一つとして、年をとるにつれて骨はもろくなります。骨と骨の間には動きを滑らかにする軟骨があります。背中の骨「脊柱」を形作る一つ一つの骨をつないでいる軟骨は「椎間板」といいますが、この軟骨は年齢とともに弱くなってつぶれることで骨同士がこすれて摩擦を起こし痛みが出るほか、骨のずれの引き起こし変形へと進んでしまいます。
また、加齢によって骨の量(骨量)が減る骨粗しょう症も腰曲がりに関係していいます。骨粗しょう症は骨密度が低下して骨がスカスカになる病気で、しりもちをついただけで骨折したり、少し力が加わっただけでも骨がつぶれていまいます(圧迫骨折)。こういった骨折も原因となり、骨が曲がってしまうのです。
上記のように、加齢による骨の変形や骨密度の低下が原因で腰が曲がることを、「老人性後弯症」といい、年齢の高い人に腰や背中が曲がっている人が見られるのはこういったことが理由です。医師の診断によっては手術の対象になります。
②姿勢の悪さ
腰や背中が丸くなってしまう原因として加齢とともに多いのが、日常生活での姿勢の悪さです。
背中を丸めた猫背の姿勢が習慣化すると、背骨が大きく曲がることがあります。
デスクワークでパソコン作業が多い人や、スマートフォンやゲームを前かがみで長時間操作する人、またかつては良く見られた風景ですが、手作業で田植えをしてきた人などにもよく見られます。
③生まれつき(先天性)
生まれつき背骨の変形が見られる場合もあり、「先天性脊椎後弯症」と呼ばれます。発生原因はわかっていない場合もあり、成長にともなって進行することもあります。
腰が曲がることによる悪影響
腰が曲がると見た目、そして体にもさまざまな影響を及ぼします。ここでは、運動機能と、内臓機能に分けて解説します。
①歩行・立ち上がり・トイレなど日常生活の動作の機能低下
腰が曲がると骨盤が後ろに傾き、背中が丸くなります。そうなると、下記のような日常的な動作が行いにくくなる可能性があります。
• 足をあげる筋肉がうまく働かない
• 椅子からの立ち上がりなどで、重心移動が行いにくい
• 肩甲骨・肩関節の動きが悪くなり、高いものに手が届かなくなる
「足をあげる」「椅子から立ち上がる」「高いものに手を伸ばす」のいずれも普段何気なく行う動作で、これらができなくなると日常生活に支障をきたします。
また、腰が曲がると前かがみの体勢になるので転びやすくなります。高齢者は、転倒しただけでも大きなケガを負うなど深刻な事態になりかねません。転んで骨折してそのまま寝たきり、ということもありうるのです。
さらには、以下のような状態も引き起こしてしまいます。
• 腹筋(インナーマッスル)がうまく働かない
• 体のねじれが少なくなる
• 腰痛・肩こり・膝痛・肩痛などの症状がでやすい
腰を起こし、背中をきちんと伸ばすことができない状態が続くと、腹筋の力が低下します。筋力が落ちて背中が丸くなると、内蔵が圧迫され不調を招く原因になります。また、腰・背中が曲がって日常生活の動作に制限が出てくると、体を伸ばすことだけでなく、右や左にまわす動きも減ってしまいます。
骨は、筋肉によって正しい位置に保たれているので、腹筋が衰えると骨(おもに骨盤)の歪みが進んで姿勢が悪くなり、さらに腰の曲がりにつながる、という悪循環に陥ってしまいます。
また、腰が曲がると体の重心が変化します。バランスをとるために周辺の筋肉や関節に負荷がかかるので、それが原因で腰痛や肩こり、そしてひざなどにも痛みが出てしまうのです。痛みがひどくなると、仕事だけでなく家事に支障をきたすことが多くなります。食事を作ったり、洗濯物をほしたり、掃除機をかけたりということが難しくなり、生活環境を維持できなくなります。また、こうした運動機能の衰えや障害は、要介護になるリスクが高まる状態、いわゆる「ロコモーティブシンドローム」につながります。介護が必要な状態になってしまうと、ますます筋力、体力などが衰えていきます。
②内臓に負担をかけたことによる症状
上でも少し触れましたが、腰が曲がると内蔵にも影響を及ぼします。具体的には、以下のような状態です。
•呼吸がしにくくなる
•食欲不振や逆流性食道炎を引き起こすこともある
•血流不全や冷えなどが起こることもある
•頭痛・めまい・吐き気・寝つきが悪いなどの症状が起こる
腰・背中が丸く曲がり肋骨の可動域が狭くなると肺の動きも制限され、空気を十分に取り込めず呼吸がしにくくなります。
また、胃や腸が圧迫されることで食べ物を消化しにくくなり食欲不振になるほか、胃酸が逆流しやすくなって逆流性食道炎を引き起こす場合があります。軽度であれば胸やけやのどの違和感を覚えるくらいですが、ひどくなると食道がただれたり、潰瘍ができたりして激しく痛むことがあります。
背骨などの骨にゆがみが出ると、体のバランスをとるために周りの筋肉が緊張して収縮し、血管を圧迫して血液の流れが悪くなります。血行不良になると、冷え性につながることもあります。
また前かがみの姿勢では、顔を前に向けるときに思い頭を上げなくてはなりません。このとき、頭部と首をつなぐ部分に負担がかかります。首の付け根の部分は「上部頸椎(じょうぶけいつい)」と呼ばれ、脳へとつながる大切な神経がたくさん集まっています。ここにストレスがかかると心身を整えてくれる自律神経のバランスが乱れ、頭痛やめまい、吐き気、不眠の原因にもなります。
これらの不調との因果関係もあるかと思いますが、腰が曲がることによって寿命にも影響を及ぼす可能性があります。
日常生活の中でできる「腰曲がり」の予防法
「腰曲がり」の状態になると心身ともにさまざまな影響を受けるため、普段から予防に努めておくことが大切です。次の3つを取り入れてみてください。
①ほぐす程度の運動(ストレッチ)で筋肉を動かす
まずは、運動で背骨を支える筋肉をしっかり動かすことが重要です。運動といっても、激しいものをする必要はありません。日常生活での何気ない動作やストレッチで、筋肉が凝り固まらないようにほぐす、というくらいの感覚でOKです。
•日常生活において姿勢を意識する
•腹筋(インナーマッスル)を強化する
•股関節の筋(大殿筋・腸腰筋)を鍛える
•背中をそらすストレッチを行う
腰が曲がる原因のひとつに「姿勢の悪さ」があるので、自分が猫背であるという自覚があるのなら、意識的に背筋を伸ばすようにしましょう。イメージとしては、「骨盤を立てて頭のてっぺんが天井に引っ張られる」という感じです。
背骨を支えてくれる筋肉も、定期的に鍛えるようにしましょう。初心者が腹筋を強化するには、「ドローイン」という呼吸を利用した体幹トレーニングがおすすめです。
やり方は、息を吐きながらお腹をへこませていき、これ以上はへこまないというところまできたら、浅い呼吸をくり返しながら数十秒キープする、というものです。
また、骨盤を支えてくれる筋肉(大殿筋・腸腰筋)も鍛えておきましょう。これらの筋肉は太ももを引き上げる動作のときに使われるので、階段を上り下りする際にももを意識的に高く上げるようにするだけでもOKです。
自分ではほぐしにくい背中の筋肉は、椅子の背もたれを活用して伸ばします。
やり方は、椅子に腰掛け、背もたれに肩甲骨の真ん中が当たるようにして上体をそらします。あとは、それを30秒キープするだけです。
ひとつひとつの動作は簡単ですので、スキマ時間でコツコツ行ってください。
②姿勢を意識、場合によっては姿勢強制アイテムの活用も
「正しい姿勢を取るために、意識的に背筋を伸ばしましょう」と先述しましたが、気づけば楽な姿勢に戻ってしまったという人は多いはず。
そういう人には、コルセットやサポーターなどのグッズを利用するのもひとつの手です。また、座ると自然に姿勢が伸びるように設計された椅子もあるので、デスクワークの際に取り入れるのもいいでしょう。
③カルシウム豊富な食事を摂る
脊椎後弯症になる原因のひとつに「骨粗しょう症」を挙げました。これは体の骨の量が減る、つまりはカルシウムが少ないことで起こるので、カルシウムを豊富に含んだ食材を意識的に摂りましょう。代表的なものとして、牛乳・チーズ・ヨーグルト・豆腐があります。さらに、カルシウムの吸収を助ける働きがあるビタミンDやマグネシウムも、積極的に摂っていきましょう。ビタミンDはサケ・サンマ・イワシなどの魚や、キクラゲ・干し椎茸などのキノコ類に、マグネシウムはのり・ひじき・こんぶといった海藻類や、イモやトウモロコシといった穀類に多く含まれています。
まとめ
腰曲がり、つまり「脊椎後弯症」になると日常生活の何気ない動作ができにくくなるほか、体調不良になる可能性もあります。
この記事で紹介した腰が曲がる原因をしっかり理解し、早いうちから対策を講じておくことが大切です。
自分はまだ若いから大丈夫と思わず、姿勢や程度な運動、食生活を意識して予防に努めていきましょう。
姿勢のプロ
花岡正敬さん(アーク株式会社)
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