厳罰化へ 少年法はどう変わる?
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少年法の3つの重要な改正点
2013年1月、法制審議会少年法部会は、少年法改正の要綱案の取りまとめを行い、翌月同総会において採択し、法務大臣に答申しました。以下の3つが重要な改正点となっています。
①少年審判に国選付添人(少年に国の費用で弁護士をつける制度)が選任される事件の範囲につき、長期3年を超える罪にまで拡大。これは、国の費用で付添人をつける範囲を殺人や強盗などの重大な事件に限定しているものを、窃盗、傷害、詐欺、恐喝などの一般的な犯罪にも拡大するということです。現在は身柄拘束を受ける事件のうち、5.5%程度が国選付添人対象となっていますが、この改正によって約80%以上の事件に拡大することが予想されます。
②少年審判に検察官が立ち会うことができる事件の範囲も、同様に長期3年を超える罪に拡大。これは、一定の事件について、厳格な事実認定が必要な場合に限り認められることとなっていた検察官の関与について(少年法22条の2。2000年の改正)、その範囲を拡大するものです。しかし、少年審判は、懇切を旨として、和やかに行うべきこととされています(法22条1項)。にもかかわらず、検察官が関与する事件が拡大されることは、少年審判の目的にそぐわないとして、反対する意見も少なくありません。
③少年の不定期刑(懲役○年と確定させるのではなく、△年以上□年以下と刑期に幅を持たせた刑)の引き上げ(長期の限度を現行の10年から15年に。短期は5年から10年に)と、有期刑の引き上げ(無期刑で処断すべき場合の有期刑の上限を15年から20年に)。これは、刑の厳罰化です。そもそも不定期刑が少年事件に認められているのは、少年には改善更生がより多く期待できるため弾力的な処遇を実現することにあります。また、現行法が最長15年の刑に限定した理由は、少年の更生に期待して早期の社会復帰をさせることにあるのです。刑の厳罰化は少年法の目的に反することと、厳罰化によって少年犯罪を抑止する効果は疑問であることなどから、こちらにも反対する意見もみられます。
「少年の健全な育成」か?「被害者感情への配慮」か?
そもそも少年法というのは、非行をした未成年者について、家庭裁判所がどのような手続きでどのような処分をするかを決めた法律です。この法律の目的は、少年の健全な育成です(少年法1条)。そのため、単なる「少年用の刑法」ではなく、少年の未成熟さと可塑(かそ)性(人格的に発展途上で柔軟性があること)を前提として、保護と教育を重視した構造になっています。しかしながら、先日の広島県呉市で起きた死体遺棄事件など、少年少女による残虐な事件が後を絶たず、被害者家族の気持ちにも配慮する必要もあるため、さらなる議論が求められるでしょう。
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