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エイベックスが音楽業界に開けた風穴!JASRAC離脱の影響

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音楽大手のエイベックスがJASRACから離脱

エイベックスが音楽業界に空けた風穴!JASRAC離脱の影響

音楽大手のエイベックス・グループ・ホールディングス(エイベックス社)は、日本音楽著作権協会(JASRAC)に任せていた約10万曲の著作権管理を、系列会社である著作権管理事業会社「イーライセンス」に移管する手続きを始めました。現状、JASRACによる著作権管理事業の独占状態が続いていますが、この動きによって今後、どんな影響があるのかを考えてみましょう。

「著作権管理事業者」は作詞家・作曲家や音楽出版社等の「著作権者」から「著作権」を預かり、レコード会社、テレビ局やカラオケ店等から「著作権使用料」を徴収。徴収した「著作権使用料」から「管理手数料」を差し引いた残りを「著作権者」に分配しています。JASRACは約300万曲を管理(シェアは約98%)しており、実質的な独占状態が続いていました。

強い影響力を持つテレビ局もJASRACと包括契約を結んでいて、放送事業収入の1.5%を支払うことで約300万曲の楽曲を自由に使用しています。JASRAC以外で管理される楽曲を使用する場合、テレビ局は個別に契約を結ばなければならず、その手間を考えればJASRAC以外で管理される楽曲が実質的に使用されないという状況にありました。

独占状態が音楽業界の活性化を妨げている

こうしたJASRACによる独占状態は「音楽業界の活性化を妨げている」とも指摘されており、不満を持つ業界関係者も多い状態でした。そんな中、今年の4月に最高裁はテレビ局とJASRACとの包括契約が他事業者の参入を妨げており、独占禁止法違反の疑いがあると判断しました。これを受け、テレビ局からの著作権使用料については、JASRACとイーライセンス等とで使用割合に応じてシェアすることが合意。テレビ局からの著作権使用料は1年で300億円を超えているため、イーライセンス側から見れば安定的な収益が確保されたことになります。

今回、エイベックス社はこのタイミングで10万曲の著作権管理をイーライセンスに移管することにしました。この影響や課題について、業界全体、ユーザー、エイベックス社ごとに考えてみましょう。

音楽業界の再編になれば大きな変化が予測される

まず、業界全体についは、売れ筋の楽曲を多く含む10万曲の移管は間違いなくインパクトがあると思われ、競争原理が働くことが期待されます。今回の動きをきっかけに、不振が続く音楽業界の活性化を期待する声も多いでしょう。

ただし、エイベックス社が今回の移管を単に自社の著作権管理による安定的な収益源の確保と考えている場合には、大きな変化はあまり期待できません。その場合、エイベックス社の収益が上がるという影響に限定されます。これが他の音楽大手も巻き込んだ再編ということになれば、大きな変化が予測されます。それには、JASRACとの差別化、特に著作権管理について多様な条件を柔軟に受け入れることや、使用料収入アップのためのコンサルティング、協力等の新たなサービスを提供するなどの工夫が必要となってきます。また、DRM(デジタル著作権管理)技術の活用による経費の低減化等の努力や、音楽文化発展への寄与等の社会活動も含めた多面的な活動が求められます。

音楽業界、ユーザー、エイベックスにとって良い影響が期待できる

次いで、ユーザー(消費者)への影響です。イーライセンスにおけるCDの使用料は5%でありJASRACの6%よりも安いことから、商品やサービスの価格が低くなることが期待されます。これは、独占状態では生じない事態であり、消費者としては歓迎すべきところです。ただし、過剰な価格競争に陥れば著作権者を含む業界全体が逆に停滞してしまう可能性があるため、バランスが重要視されます。

続けて、エイベックス社についてはまず、自社の著作権管理による安定的な収益源の獲得という点でメリットがあります。また、さまざまな事業を運営しているため、事業ごとに柔軟に著作権料を設定・変更することで、競争力を発揮できることが期待できます。さらには、上述の再編を進める際には主導権を握ることになり、強い影響力を発揮することになります。結果、国内シェアを一定以上確保できれば、外国楽曲の著作権管理の依頼も増加していくでしょう。このように、エイベックス社にとっては大変な苦労が待っているとは考えられますが、その分、上手くいった場合のメリットも大きなものとなります。

以上のように、今回の動きは業界全体、ユーザー、エイベックス社それぞれに良い影響がありそうです。成功のカギは、JASRACとの差別化が図れるか、受け皿になれるか、ということでしょう。今回の動きが音楽業界全体の活性化につながり、音楽文化の発展につながることを心より期待しています。

技術とビジネスとの両面から経営をサポートする弁理士

乾利之さん(IPNJ 国際特許事務所)

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