「産んだ女性が母親」は変わらず?法的解釈の今後
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出産した女性を母親と規定する法案が提出へ
第三者が介在する生殖補助医療について議論する自民党のプロジェクトチームは、6月26日に開催された厚生労働部会と法務部会との合同会議を開催。そこで、卵子提供や代理出産で子どもが生まれた場合、出産した女性を母親と規定する民法特例法案の骨子を了承し、今国会に法案を提出する方針であるとの報道がなされました。
そもそも、民法772条1項の「妻が婚姻中に懐胎した子どもは、夫の子と推定する」という規定は、懐胎し出産した女性が出生した子の母であり、母と嫡出子との間の母子親子関係は懐胎、出産という客観的な事実により当然に成立することを前提としたものだと解されています。母とその非嫡出子との母子関係についても、同様に理解されていました。
血縁的要素と出産という外形的事実のいずれを重視するのか
このように、我が国の民法制定当時は、懐胎し出産した女性は遺伝的にも例外なく出生した子との繋がりがあるという事情が存在し、その上で出産という客観的かつ外形上明らかな事実を捉えて母子関係の成立を認めることにしていました。出産と同時に出生した子どもと出産した女性との間に母子関係を早期に一義的に確定させることが、子の福祉に適うとも考えられていました。
しかしながら、現在では、卵子提供や代理出産など、第三者が介在する生殖補助医療技術が進歩しました。そのため、上記のような民法制定当時とは時代背景が異なり、非常に問題となっています。結局、血縁(遺伝)的要素と出産という外形的事実のいずれを重視するのかというところに帰着せざるを得ません。
まだまだ議論は尽きない問題
テレビで有名な夫婦がアメリカ人女性に受精卵を提供して代理出産を依頼した件に関し、最高裁が平成19年3月23日に下した決定は、なお従前の枠組みによる判断を維持し、卵子を提供した日本人女性と生まれた子との間の母子関係は認められないとしました。しかし、「この問題の解決のためには、医療法制、親子法制の面から多角的な観点にわたる検討を踏まえた法の整備が必要である」としながらも、「関係者が多く、多様な関係者の間にさまざまな意見が存在することから、妥当な合意を得ることは必ずしも容易ではないと考える」といった裁判官の補足意見も付されていました。
今回報道された法案は、代理出産によって生まれた子の母は、出産した女性であるということを明文化するものですから、従前の枠組みを積極的に維持していく方向に働きます。生殖補助医療技術の進歩という現実を踏まえても、なおそのような判断枠組みが維持されるべきなのか否か。「生まれた子と卵子提供をした女性との間に養子縁組の方法以外で親子関係を認めるための制度を別途用意すべきではないか」など、まだまだ議論は尽きない問題と言えるでしょう。
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