「パクリ」は違法にあらず!「鳥貴族RVS鳥二郎R」
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焼き鳥居酒屋チェーン店「鳥貴族」と「鳥二郎」の争いが勃発
焼き鳥居酒屋チェーン店「鳥貴族」と「鳥二郎」の争いが世間を賑わせ、「パクリはどこまで許されるのか」という問題提起にまで発展しています。実際に訴状を見ていないため正確性は欠けるものの、インターネット上では、不正競争防止法第2条第1項第1、号(以下「不競法第1、2号」と言います)あるいは、商標法に基づく訴訟であるとの記載があるため、以下においては、これらに限定して言及します。
インターネット上では、本件について「鳥二郎が鳥貴族をパクった」との記載が散見されますが、果たして本件の問題点は「パクリ」にあるのでしょうか。結論から言えば、「パクリ」は直接的な問題ではありません。なぜなら、不競法第1、2号も商標法も「パクリ」を直接的には禁止していないからです。
これら法律に違反しているか否かを判断する基準は、「パクリか否か」ではなく、「同一あるいは類似」するかです。従って、例えば鳥二郎が鳥貴族の看板をパクっていなかったとしても、結果的に看板が類似していると法的に判断されれば、鳥二郎の行為は違法となります。一方、鳥二郎が鳥貴族の看板をパクっていたとしても、類似していなければ違法にはなりません。
総合的に判断しても両看板は非類似の関係にある
鳥貴族と鳥二郎の看板が類似しているか否かは、見た目(外観)、呼び方(称呼)、イメージ(観念)の3つの要素から総合的に判断されます。鳥二郎の看板も鳥貴族の看板と同じように、赤と黄色で配色されており、鳥の文字も鳥を模したものであることから、共通する点がいくつか確認できます。
しかし、冷静に考えれば見間違うことは恐らくないと思われ、外観上は非類似であるといえます。呼び方も「トリキゾク」に対して「トリジロー」であることから、一般人が聞き違えることもなく称呼上も非類似と考えられます。さらに、観念においても両者非類似であると考えられ、総合的に判断しても両看板は非類似の関係にあります。
全面禁止は商売上のアイデア、デザインに制約をかける
また、本件については看板やロゴの使用の差し止めだけでなく、価格設定、コース設定、店舗内装及び従業員の服装の使用差止め、損害賠償まで鳥貴族側が求めています。実際、鳥貴族の価格設定は全品280円であるのに対して鳥二郎は270円。従業員の服装は共に黒で、店舗内装は共に木目調のデザインであるなど、確かに鳥二郎は鳥貴族を「参考」にしているのでしょう。
しかしながら、仮にこれらが全て「パクリ」だとしても、全て禁止していいのでしょうか。パクられた側の意見は理解できるものの、すべて違法としてしまえば、今後、商売上のアイデア、デザインなどに制約がかかってしまいます。全てを法律で規制するわけにはいかないのです。
今回の事例に類似するか否かは分かりませんが、過去に「エクセルシオールR」と「スターバックスR」の争いがありました。概略すれば、エクセルシオールの看板がスターバックスの看板に似ているとして、スターバックスが不競法に基づいて訴えた事件です。結局、和解になりましたが、その後、エクセルシオールの看板は緑から青に変わりました。この結果から、スターバックス側はエクセルシオールの看板が「緑」であったことが許容できず、マネに該当するとの判断だったと推測されます。
早めの対策で他社を抑制することが大切
パイオニア的な存在はマネされる宿命にあり、法律によって保護されるものと保護されないものがあることを認識しておくことが重要です。例えば、鳥貴族のケースもスターバックスのケースも、マネされたと感じるものの中に「色」があります。近年の商標法の改正により、この「色」を商標登録することができるようになり、「色」を商標登録して他社のマネを防止するという方法があります。また、鳥貴族のケースでは、「鳥」の文字が似ていると主張しているため、「鳥」の文字だけを商標登録しておくという手法も有効です。
本件において鳥貴族が差し止めを求めているのは、居酒屋チェーン店「鳥貴族」の全体的なイメージであると思われ、米国であれば、「トレードドレス」として保護され得るものですが、日本ではまだ保護対象にはなりません。近い将来、我が国でも「トレードドレス」が保護対象となる可能性はありますが、他社にマネされたくないものを見極め、その時点で法律によって保護され得るものであれば、早めに対策を取って他社を抑制することが大切であると考えます。
「目印」で認知と差別化を図り売上を上げる商標に強い弁理士
茅原裕二さん(わらしべ特許商標事務所)
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