慎重な議論が必要!児童虐待の時効停止案が必要とされるワケ
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児童虐待の相談件数が7万件を突破
全国の児童相談所で児童虐待の相談対応件数が年々増加しており、平成25年にはついに7万件を突破しました。そんな中、自民党は児童虐待の中でも特に性的虐待を対象として、時効の見直しを検討し始めたとの報道がありました。
民事上は3年、刑事上も7年または10年で時効に
児童虐待防止法によれば、児童虐待とは「保護者がその監護する児童(18歳に満たない者)を虐待する行為」を指します。そして、児童を性的に虐待した場合、民事上の損害賠償責任(民法709条)のみならず、刑事上も強制わいせつ罪(刑法176条)ないし強姦罪(同法177条)として、処罰の対象になります。
民事上の損害賠償責任は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知ったときから3年(時効)が経過したとき、あるいは不法行為のときから20年(除斥期間)を経過したときに消滅するものと定められています(民法724条)。また、刑事責任も、犯罪行為が終わったときから7年(強制わいせつ罪の場合)又は10年(強姦罪の場合)の経過で公訴時効にかかるものとされています(刑事訴訟法250条2項)。
被害を言い出せず時間が経過するケースが
しかし、幼少期に親族から性的虐待を受けたとしても、虐待の意味が理解できるようになるのは思春期以降であることが多く、身近な親族が加害者となっている場合、なかなか言い出すことができないまま時間が経過してしまうケースも存在します。
また、実際にPTSD(心的外傷ストレス障害)などの疾患を発症した際、既に民事上も刑事上も責任を追及できない事態に陥っているというのでは、極めて正義に反するのではないかという問題意識が、今回の見直しの動機となっているようです。具体的には、見直し案の一つとして、被害者が成人に達するまで、時効の進行を停止させるという案が出ているようです。
慎重に議論を重ねることが望まれる
この問題は、被害者の利益と時効ないし除斥期間の制度の趣旨をどのように調和させるのかという、難しい問題をはらんでいます。時効ないし除斥期間の制度は、法律関係の早期確定といった趣旨で設けられています。責任を追及される側の立場から
被害者の利益を保護する必要があることは言うまでもないことなのですが、かといって、責任を追及される側の防御の利益もないがしろにすることはできません。今後、慎重に議論を重ねていくことが望まれます。
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