年金5千万円以上不正受給、制度上の盲点はどこに?
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約半世紀にわたり、86歳の女性が5000万円以上の年金を不正受給
死亡した両親が生存しているように装い、約半世紀にわたり5000万円以上の年金を不正受給したとして、岐阜県恵那市の86歳の女が詐欺などの疑いで逮捕されました。
遺族による年金の不正受給は、決して珍しいことではありません。5年前にも遺族が受給者の死亡を役所に届け出ず年金を受給し続けていた事件がありましたし、その後も同様の事件が起きています。基本的に公的年金の受給権は、受給者が死亡すれば消滅します。そのため、受給者の生存確認は重要です。
生存確認の方法として、かつては年に一度「年金受給権者現況届(現況届)」に署名し、役所で生存を証明する印を押してもらい提出する必要がありました。平成10年から現況届に役所の証明印は不要になり、平成18年からは住民票コードを登録すれば現況届は原則不要になりました。住民票コードが登録された受給者が死亡した場合、親族が市町村に死亡届を提出すれば、年金機構は住民基本台帳ネットワーク(住基ネット)を通じて死亡のデータを取得できます。
社会保険庁・年金機構には毎年虚偽の現況届を提出して両親の生存を偽装
今回の件では、両親が死亡したのは1965年と68年で、市には死亡届を提出していました。平成9年以前は現況届には市の証明印が必要でしたが、逮捕された女は市役所勤務だったそうですから何らかの偽装をしたのでしょう。その手法については、今後の捜査や調査で明らかになるはずです。
一方、社会保険庁・年金機構には毎年虚偽の現況届を提出して両親の生存を偽装し、年金を受給し続けました。この間、住基ネットを通じて生存確認の情報を取得できるようになりましたし、5年前の事件の後には、厚生労働省は後期高齢者医療制度の保険者から情報の提供を受け、この制度を1年間利用していない年金受給者について調査もしています。それでも死亡の事実を確認することはできませんでした。
市には死亡届を提出していたため、新たな制度が導入されても対象になりません。住民票コードも付番されないので住基ネットを通じて情報を取得することはできませんし、後期高齢者医療制度の加入者にもならないので5年前の調査でも対象外だったと考えられます。
年金機構が定期的に市町村へ問い合わせをすることで不正を阻止
住基ネットであれば市町村との情報の共有はできますが、現況届ではそれができませんし、今回の件のように年金機構だけが死亡の事実を知らなかったということになりかねません。住基ネットで生存確認できない受給者については、年金機構は市町村へ定期的な問い合わせなどを行うべきです。
今回の不正も、110歳を超える高齢者が受給していることに疑問を持った年金機構側が、恵那市に問い合わせたことで発覚したものです。年金機構から市町村へ簡単な問い合せをするだけでも、防げる不正受給はあるはずです。
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