首相が明言!シリコンバレーに200社進出支援の狙い
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日本の中小企業200社をえりすぐり、シリコンバレーに派遣
サンフランシスコのシリコンバレーといえば、ハイテク産業の中心拠点です。今を時めくAppleや、Google、YahooといったIT企業が、この地に本社を構え全世界に革新的な製品を創出するなど、ベンチャー企業の活動が活発な地域です。そのサンフランシスコの近郊に、優秀な人材を数多く輩出しているスタンフォード大学があります。
今年4月30日、この大学の公開シンポジウムで講演した安倍晋三首相の発言が、翌日のマスコミ報道に大きく取り上げられました。「日本には技術を持つが、地域でくすぶっている中小企業がたくさんある。5年で200社をえりすぐり、シリコンバレーに送り込む」と話し、中小・中堅企業をシリコンバレーに派遣し、海外展開の支援に乗り出す意向です。
日本の企業組織文化や、産業人材のグローバル育成を狙う
発言が注目された理由は、ものづくり企業のイメージが強い「中小企業」という言葉と、ITハイテク産業のイメージの強い「シリコンバレー」の組み合わせに、いささかの驚きを感じる点、そして、国の政策として200社という具体的な数字が提示された点ではないかと思います。
またその裏に「日本の宝である中小企業を米国に持っていけば、日本の産業が空洞化するのではないか」との感触もあるかもしれません。さて、このニュースをもう少し詳しく見ると、安倍首相は講演の中で正確には次の3つのことを述べているようです。第1は、5年で200社をえりすぐって、シリコンバレーに送り込むこと。第2はベンチャーに挑戦するヒト、大企業などで新事業に挑戦するヒト、ベンチャー投資に挑戦するヒトを毎年100人募集し、30人を選抜してシリコンバレーに送りこむこと。第3は、日米の大・中堅・中小・ベンチャー企業によるビジネス・マッチングの大規模イベントを、東京とシリコンバレー双方で開催すること。
すなわち、シリコンバレーというハイテク産業地域に焦点を当てて、企業、ヒトの交流を通して、最終的には日本の企業組織文化や、産業人材のグローバル育成を狙うというもののようです。実際、経産省ではこの5月から、前述の第2のプロジェクト「グローバル起業家等育成プログラム」として、100人の募集を行っています。
シリコンバレー流が日本の企業文化にマッチするかどうかに注目
シリコンバレーはベンチャー企業のメッカですから、革新的なアイデアを初期の段階から事業として育成する体制や、投資家・事業アドバイザーなどの支援者、起業家育成プログラムが充実しており、その環境を利用して日本の企業や産業人材を教育し、日本の産業に資するように国として支援しようということでしょう。
ただ日本の企業文化を、シリコンバレー流に教育することが、現在の中小企業の発展に資することかどうかに関してはさまざまな意見があるようです。つまり、米国流が独自性のある日本の企業文化、人材育成方法に根付くかどうか。この点は、今後、注目していきたいと思います。
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