授業は中高レベル、もはや大学は「就職」への入場券発行機関に?
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文科省が大学の履行状況を調査し、問題点を指摘
文科省が、過去1年間に学部・学科を新設した502大学を対象に設置計画の履行状況を調査し、半数以上の253校に対して問題点を指摘しました。改善を促した主な点は「合格者の選考や定員数の設定など不明確な入学基準」「小・中学校レベルの授業内容や外部資格をそのまま単位として認定するなど、大学の教育水準から逸脱した教育課程」「大学設置基準で定められた専任教員数を満たさないケースや教員として十分な業績が見当たらないなど教員の質」の3点です。
このうち、ネットで話題になっていたのが教育内容で、小学校高学年で学習する算数の分数や百分率、四捨五入、中学1年で勉強する英語のbe動詞や進行形など、高等教育機関としての適格性を疑われかねない授業の事例があって驚いてしまいます。
これについて、低レベルの授業をする大学の存在意義を問う厳しいコメントから、教育の選択肢が少ない地方では大学が必要だという消極的肯定論まで、さまざまな意見が交わされています。
一部の大学はもはや学問をする場ではなくなった
少子化の影響もあり、大学進学志望者数が全国の大学の総定員数を下回る大学全入時代になりました。そのため、大学へ進学するための学力や意欲に大きな差異が生じ、高等教育を受ける前提となる中等・初等教育からやり直す必要がある学生が増えています。
高校を卒業して就職すれば良いとも思いますが、現実には大卒が応募条件になっている企業が多く、大学全入時代だからこそ、大学くらい卒業していなければ就職に不利と考える学生が多いのかもしれません。そうした人々にとって、大学はもはや学問をする場ではなく、単なる「卒業証書=就職」への入場券発行機関であるとも表現できます。
採用側の企業にも責任。実体的な「修学歴」を採用条件にすべき
これには、採用側の企業にも責任があります。実質大学全入で意義の薄れた「大卒で一律足切り」という採用方法を改め、名目的な「通学歴」ではなく実体的な「修学歴」を採用条件の一つとする制度へ移行するべきです。そうなれば、一つの大学に限定する必要はなく、通信教育やMOOCなども含め、さまざまな教育機関から各自の目標に合わせて受講コースを選択し、自由にカリキュラムを設計することが可能です。これを実現するために、何を学んでどのような評価を受けたのか、個人の教育履歴データを一元的に蓄積・管理するシステムができれば理想的です。
同時に、何をどのように教えているのか、講座内容が一目で分かるような共通の開示基準を確立して透明性を確保することが必要です。似通った名称で同じ単位時間数の講座でも、教育機関によって中身や評価法が全く異なる場合もあり、単純に比較・判断できないからです。
固定観念を捨て、生涯いつでも入退学を可能に
担当教員の経歴や業績、講義の目的と内容、使用テキスト、時間数、提出課題、評価方法などを明確に示したシラバスの作成・開示を義務付けることも必須です。そして、食品表示について消費者庁が監理しているように、文科省には各講座が高等教育機関として相応しいレベルか、審査・認証する役割を期待します。
以上のことが実現すれば、大学間の生徒獲得競争はますます激しくなり、淘汰される学校が増えるかもしれません。だからこそ「大学は高校卒業後直ぐに入って4年で卒業」という固定観念を捨て、一人ひとりのキャリアパスに合わせ、生涯いつでも入退学を可能にすべきです。単に卒業証書という紙切れ1枚を手に入れるために、無為に4年間を過ごすよりよほど有意義だと思います。
21世紀型個別+自律教育のプロモーター
小松健司さん(21世紀教育応援団 アイパル)
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