夫婦別姓導入で崩れる?「家族のあり方」
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以前から夫婦別姓の導入の可否が議論されているが、実現に至らず
産経新聞は2月「家族のあり方をめぐる明治以来の2つの民法規定について、最高裁が大法廷で憲法判断する見込みとなった」と報じました。その1つが、夫婦別姓導入についてです。日本の民法では、結婚する際、夫または妻の姓を名乗ることが規定されています。いわゆる夫婦同姓です。そして、大半の夫婦が、夫の姓を名乗っています。しかし、諸外国に目を向ければ、結婚しても姓は変わらず、夫婦別姓が採用されている国があるのを知っている人も多いでしょう。
結婚と姓のあり方は、文化や価値観によってさまざまな考え方があります。日本でも以前から、選択的夫婦別姓の導入の可否が議論されていますが、実現には至っていません。現行民法の夫婦同姓義務に対する異議としては、「婚姻によって姓を変えれば、職業上また人間関係上、不便や支障がある」「出生からずっと使用していた元の姓を用いなくなるのは寂しい、残念な気持ちになる」などが挙げられます。
また、あくまで選択制を採用すれば良いのであり、別姓を義務化せよとまでは述べていないにも関わらず、なぜ認めようとしないのかとも言われています。
「姓」は家族意識にも影響を与えている
他方、選択制であっても別姓採用反対の意見としては、「これまで築いてきた日本の家族意識が、選択とはいえ別姓を認めることにより揺るがされる」「夫婦のみならず、子どもと姓が異なるのは不便である」「仕事における不便や支障は通称使用を認めれば足り、家族観維持の方が重要」といったことなどが挙げられています。
戸籍を見ても、一つの戸籍には、同じ姓の者しか入ることはできず、筆頭者には姓と名が書かれてありますが、筆頭者以外の者は姓が同じであることを前提として、名だけが書かれてあります。日常的にも、「○○家」、「○○ご夫妻」など、家族や夫婦をまとめて共通の姓での呼び方が浸透しており、夫婦同姓であるが故に、姓は家族の一体感を示すような用いられ方をしています。このように、単に、姓はその人の姓であるというだけではなく、家族意識にも影響を与えているということが言われています。
最高裁の判断に注目が集まる
これに対し、「○○さん・△△さん家」や、「○○・△△ご夫妻」と呼べば良いだけで、そもそも信頼し合う者同士が一緒に暮らす日々の生活そのものから家族意識は生まれるものであり、姓だけで家族意識が培われたり、壊れたりするものではないはずだとの反論が予想されます。
どちらが正しいということではなく、きりがない議論になります。要は、伝統的な価値観や視点と、女性の社会進出などを受けた社会情勢の変化により、表面化された価値観との対立であると考えられます。この点につき、最高裁判所は夫婦同性義務の憲法違反を主張する裁判について、今般大法廷を開き、憲法判断をする見込みと報じられました。長年議論されてきた問題だけに、最高裁の判断が注目されます。
離婚や相続に強い女性弁護士
柳原桑子さん(柳原法律事務所)
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