「モラハラ」は離婚事由になる?
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「モラハラ」は人の心を傷つける精神的な暴力
芸能人が「モラハラ」を理由に離婚請求訴訟を提起したという報道がありました。そのため、最近メディアでもよく目にするようになった「モラハラ(モラルハラスメント)」ですが、どういった概念なのでしょうか。
セクシャルハラスメント、パワーハラスメントなどという言葉とともに、ハラスメント(=嫌がらせや苦しめ)の形のひとつとしてある「モラルハラスメント」。定義するならば、言葉や態度でもって人の心を傷つける精神的な暴力です。無視、責める、見下す、侮辱、皮肉るといった言動が陰湿に巧妙に繰り返されて、相手を精神的に追い詰めていきます。
殴る、蹴るなどの有形力が行使される体を傷つける暴力と違って、ひとつひとつの言動は目立つようなものではなかったりするので、気づきにくく、また、受けた方は「自分がまずいことをしてしまったからではないか」「自分が未熟だからではないか」などと罪悪感のようなものを感じてしまいがちで、気づきが遅れるという傾向があります。
言葉の暴力、侮辱的言動なども離婚事由になりえる
では、夫婦間のモラハラを理由に離婚できるのでしょうか。離婚には、夫婦間の合意でできる「協議離婚」、裁判所の調停でもって離婚する「調停離婚」、裁判所に訴訟を提起して離婚する「裁判離婚」、訴訟中に和解が成立する「和解離婚」という、いくつかの手続きがあります。協議離婚および調停離婚は、夫婦の合意が成立することによって離婚する手続きのため、離婚の事由について法的な制約はありません。
しかし、裁判離婚では、裁判所が法律に規定された離婚事由があるかどうかといったことを判断して離婚に至る手続きのため、モラハラが離婚事由として認められるのかどうかという問題が生じます。法が規定する離婚事由に、そのまま「モラルハラスメント」というものはありません。モラルハラスメントが離婚事由として主張される場合には、「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」という規定に該当するかが検討されます。
抽象的な言葉ですが、要は、婚姻生活が、不仲で別居に至るなどして破綻し、もはや夫婦の協力関係などを修復することは困難であるといえる事情があるかどうかです。そして、体を傷つける有形力を行使する暴力とともに、言葉の暴力、侮辱的言動なども程度や頻度によっては、婚姻関係を破綻させるに値する行為として離婚事由になりえます。
外部からわかりにくいのも特徴。明らかな証拠が出しにくい
ただ、裁判では、起きた事実を述べたとしても、相手配偶者が否定し両者の言い分が違えば、第三者である裁判所は直ちに述べられた事実があったものとは認定できません。そのため、証明が必要になりますが、なかなか外部からわかりにくいのもモラハラの特徴であるために、明らかな証拠というものが出しにくいものです。
モラハラの態度が現れている録音、メール、写真など、行為そのものを証明するものや、医療機関が発行した診断書など、複数のものをもって検討することになるでしょう。
離婚や相続に強い女性弁護士
柳原桑子さん(柳原法律事務所)
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