セクハラ訴訟で1300万円の衝撃、和解額が高騰した要因
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裁判の認容金額は、一般的に300万円くらいまでが多い
男性店長から度重なるセクハラを受けたという女性が、勤めていた会社を相手取って損害賠償を求めていた裁判で、会社がその女性に対して1,300万円を支払って和解したということがニュースになりました。
セクハラを理由とした裁判の認容金額は、内容にもよりますが、一般的に300万円くらいまでが多く、この金額は破格の値段といえます。なぜ、和解金額が高騰したのでしょうか?
PTSDの労災認定が慰謝料の加算要素に
セクハラを理由に損害賠償請求をする場合、必ず請求の原因となる損害の項目は「慰謝料」です。これは、セクハラを受けたことに対する精神的な損害に対する賠償金のこと。精神的な損害ということで、その金額を算定する上では何か計算式があるわけではないのですが、同種事例などを参考に算出されます。このたびの事件でも、慰謝料は必ず和解金額の内訳に含まれているはずです。
報道によると、この事件では被害者の女性がPTSD(心的外傷後ストレス障害)という精神疾患を患い、これが労災として認定されているとのことです。これを前提にすると、慰謝料を算定する上でも加算要素となります。
労災からの支給では不足している「逸失利益」分も考慮
また、PTSDを原因として被害女性が職務を行うことができなくなったとすれば、そういった「逸失利益」を請求することができます。逸失利益とは、この事件でいうと、セクハラという違法な行為が無ければ、この女性が得られていたはずの利益が、セクハラにより失われたため、その失われた利益を賠償してもらうというものです。
PTSDに関しては労災として認定されており、休業補償給付をすでに受けているとのことですが、この裁判では労災による支給では足りない金額を請求しているものと思われます。和解金額には、その労災からの支給では不足している逸失利益分も考慮して金額が定められたのでしょう。
金額に表れない約束を交わせたことにも和解の意義
元々、この裁判では約2,700万円が請求されていたようですので、和解金額はその半分以下に収まっています。その和解内容には、(1)同社は解決金の半額650万円について男性従業員に負担を求めること、(2)男性従業員の在職期間中、被害女性が居住する京阪神地域を勤務地や出張先にしないよう努める、といった内容が盛り込まれたようです。判決では通常金銭の支払いを命じるだけとなりますので、被害女性にとって意味のある、金額に表れない約束を交わせたことにも、和解をした意義があったものと思います。
こういった事件を受けて、企業側に対しては、セクハラという問題を軽々しく考えず、セクハラの無い働きやすい職場作りを心がけてほしいと切に願います。
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