「年金マンガ」に批判の嵐、若者の反発は当然?
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厚生労働省の「年金マンガ」に批判の声が集まる
厚生労働省のホームページ上で公開されている年金マンガ「いっしょに検証!公的年金」に対して批判的な発言が目立ち始めました。これは、平成26年5月に公開され、0話から11話まであり、架空の一家が年金の制度を解説するものです。
批判が集まった場面に、「今、年金をもらっている世代よりかなり減るのって聞いた」との悩みに対して、「現在、年金を受け取っている世代は教育や医療が十分でなかった時代に自分たちの親を扶養しながら日本をここまで発展してきたから、今の若者の将来の年金額に差があっても若者は損ではない」といった趣旨の内容があります。その理由で本当に納得できるでしょうか?
「現在の若者は年金で損をするのは仕方ない」とも受け取れる
子どもの数が平均4人以上であった年金受給者が現役の時代とは異なり、今は少子高齢化が進み、現役世代の保険料は年々上がって負担は決して軽くはありません。また、高度成長期のように正社員で終身雇用が一般的ではなくなり、望まずに非正規雇用となって生活が不安定な若者も多くいます。
そのような中、今の高齢者の医療保険料については優遇措置があります。にもかかわらず、「今の年金受給者だけが苦労して、現在の若者は恵まれているから将来の年金で損をするのは仕方ない」とも受け取れる表現でしょう。
年金制度を支えるために子どもを産もうと考える人はいない
また、姉が少子高齢化を心配する妹の女子大生に対して、「結婚して子どもをたくさん産めばいいのよ」と発言している場面があります。「女性は子どもを産む機械」であるかのような発言で、会社内で男性が女性に言えばセクハラ行為となり懲戒処分も考えられます。
少子高齢化を防ぐには、それ以前に、子どもがいても育児や仕事をしやすい環境を整えることが重要です。子どもを産むか産まないか本来は個人の自由であり、年金制度を支えるために子どもを産もうと考える人はいないでしょう。
不信感を払拭するには障害年金受給や遺族年金支給を強調すべき
多くの若者は、将来、年金が本当にもらえるのかという不信感を持っています。払拭するためには、このマンガの内容では難しいでしょう。
若者の中には、保険料を払うことが損か得かについて関心を持っている人が多くいます。説明として、年金制度は現役世代が高齢世代を支える世代間扶養で、高齢でなくても病気やケガで一定の障害状態となった場合に障害年金を受給でき、また、亡くなった場合に生計維持されていた遺族に遺族年金が支給されることを強調すべきでしょう。
「年金の保険料を払う代わりに個人で積み立てる」と考える人もいますが、いざという時には限界があります。年金は保険料以外に税金や積立金が財源となっており、少子高齢化が進んでも5年に1回の財政検証で、公的年金の健全性を検証する仕組みとなっています。このことをホームページ以外でも学校教育の場などで行い、正しく理解してもらうことが必要かと思います。
リスク対応型就業規則作成と障害年金請求の専門家
松本明親さん(社会保険労務士 松本事務所)
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