ハローワークが求人拒否「ブラック企業」の分かれ目
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現状、違法性がなければハローワークは求人を受理する
過酷な労働を強いるブラック企業対策を強化する目的で、厚生労働省は残業代不払いなどの違法行為を繰り返す企業の新卒求人を、ハローワークで受理しない制度を創設する方針を固めました。近年、求人票の労働条件と、採用後の労働条件の相違が労働問題化するケースが多発しています。厚生労働省も少し前に2013年のハローワーク(公共職業安定所)求人票のうち、4割がうそであったことを発表しました。
国が介入している求人は応募者の信頼度が得られやすく、応募者も安心感を高める傾向にあります。しかし、ハローワークの求人票は企業が自由に記載して提出するだけのシステムであり、記載内容の違法性のみにチェック機能が働きます。最低賃金、社会保険の適用、休日、休憩、労働時間などに違法性がなければ、ハローワークは受理します。
ブラック企業に対し、国も顕著な動きを見せる
従来の仕組みでは、実態として企業が求人票記載の労働条件通りの適正な運用にあるか否かについて、ハローワークの目が届かなかったのです。長時間労働などで若年者を使い捨てにする企業を厚生労働省は「ブラック企業」と捉えているようですが、求人票に関連してみれば、求人票の労働条件より実際の労働条件を低下させる(不利益変更)企業とも総称できます。とりわけ、求人票と採用後の労働条件で問題となるのが、その「ブラック企業」です。
ブラック企業に対し、国も顕著な動きを見せてきました。2014年3月からは、求人ホットラインを設け、直近(2015年1月9日)の労働政策審議会では、ハローワークにおける求人不受理という対策が検討されています。求人が不受理の対象となる企業についてですが、審議会においても取り扱う行政の透明性の問題が指摘されています。
求人記載内容と実態に相違があれば、不受理のリスクは高まる
詳細は今後の審議を経て確定されることになりますが、現段階では、「労働基準法違反として同一条項違反が年2回以上あり、是正指導を受けた場合」「男女雇用機会均等法及び育児介護休業法違反として、企業名などの公表に至った場合」などが求人不受理のケースとして挙げられます。不受理期間は、法違反が是正されるまでの期間と法違反を重ねないことを確認する一定期間との考えがあります。
これを踏まえれば、法定時間外労働や深夜労働などに対する割増賃金未払い、労働条件の明示、休憩・休日・有給休暇付与などの労働問題が多発している内容を中心に、求人段階で記載内容と実態に相違があれば、求人不受理のリスクが出てくる可能性があります。セクハラや妊娠を理由とする不利益扱い、あるいは育児休業を取得させないなどの不利益扱いも同様です。
実態を真実に反映させた求人票記載の遵守が今後の課題
また、審議会におけるこれまでの意見の中には、不受理の対象として虚偽記載の求人を繰り返している企業の検討に加え、3年以内の離職率などのデータ開示、固定残業代及び試用期間の記述や労働条件通知書で労働条件を確認することの記述についてなど、多角的な視点で検討がなされているところです。
場合によっては、法令違反に留まらず厚生労働省が定める指針に沿っていなかったり、離職率が高かったりすると求人不受理のリスクにつながるかもしれません。最終的には政省令によるため、審議会の動向に注目が集まります。すぐに「ブラック企業」ではないかと猜疑心で見られる昨今、実態を真実に反映させた求人票記載が遵守できるかが今後の課題といえます。
労務全般の助言と支援、リスク予防と対策を得意とする特定社労士
亀岡亜己雄さん(首都圏中央社労士事務所)
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