「1票の格差」問題から考える選挙後の未来予想図
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1票の格差を訴える弁護士グループが違憲訴訟を提起する見込み
2014年12月14日、衆議院選挙が実施され新しい議員が決まろうとしています。ところが、この選挙の正当性には疑問が呈され、1票の格差を訴える弁護士グループが違憲訴訟を提起する見込みです。
正当性に対する疑問の根拠が「1票の格差」の問題です。憲法14条は1項で「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」と規定していますので、住んでいる地域が違うことで投票価値に差が生じることは憲法違反ではないかというのが理由です。
「違憲状態」認定でも、選挙そのものは有効とされるのが通例
今回の衆議院選挙では、小選挙区における1票の格差は最大2.14倍となっています。2年前の衆議院選挙では1票の格差が最大2.43倍あったことから、多くの選挙無効訴訟が起こされ、高裁レベルでは違憲による選挙無効の判断が示された選挙区もありました。しかし、最高裁判決は「違憲状態」と認定したものの、選挙後に格差を1.998倍に縮める小選挙区の「0増5減」がなされたことに対する配慮もあって「違憲」や「選挙無効」という判断には至りませんでした。
「違憲状態」と「違憲」の違いはわかりにくいかもしれませんが、投票価値の不平等が一般的に合理性を欠く状態になっているという判断が「違憲状態」であり、これが合理的な期間内に是正されない場合に「違憲」という判断がなされるとされています。ただし、定数配分を「違憲」ないし「違憲状態」と判断しても、選挙自体を取り消すと著しく公益を害する事情があるという理由(これを「事情判決の法理」といいます)によって、選挙そのものは有効とされるのがこれまでの通例でした。
これまで以上に違憲無効に踏み込んだ判断がなされる可能性も
国政選挙は、国の統治機構に関する問題でもあるため、裁判所は選挙制度への介入に消極的な印象があります。そのことを良いことに、政治家は、違憲状態という判決が繰り返し出されても選挙制度の根本的な改革に乗り出そうとはしていません。
振り返ると、2012年の前回の選挙は、当時の野田総理が安倍自民党総裁との党首討論で、「選挙制度改革をやる」との確約を得たことから衆議院を解散して総選挙を実施したという経過があるのに、選挙後には、裁判所がぎりぎりセーフと認める1票の格差を2倍以下にするための0増5減の改革をしただけで、約束した選挙制度改革は実施されないままになっています。
しかし、2倍以下であっても1票の格差があることは明らかなわけですから、これを解消する方向で選挙制度を改革しなければ、選挙のたびに違憲訴訟が提起されることは避けられません。今回の選挙の後に提起される選挙無効の訴訟は、政治があまりに司法の判断をないがしろにしているという、この間の経過に鑑みて、これまで以上に違憲無効に踏み込んだ判断がなされる可能性が高まったと思います。
新たな選挙制度の下で早期に再び解散総選挙へ?
ただし、最終的には最高裁の判断を待たなければ裁判所の判断は確定しませんので、裁判所の結論が出るまでには1年くらいはかかるでしょう。しかし、仮に違憲無効の判断が確定したとすると、特定の選挙区の選挙だけが無効になり、違憲状態が解消されるような改革が実施されて改めて選挙が実施されるまでは、その選挙区から選出される議員がいない状態で国会審議がなされるということになるのだと思います。
また、1票の格差を解消するということは、選挙区割りの変更なども必要となってきますので、そうなれば、新たな選挙制度の下で早期に再び解散総選挙を行うという流れになる可能性もあるでしょう。
今回の解散総選挙でも700億円の経費が必要と報道されていますが、私たち国民にとっては、こんなことに時間と費用を費やされるのは良い迷惑です。早く安定した国会運営ができるよう選挙制度の改革を速やかに実施してほしいものです。
弁護士と中小企業診断士の視点で経営者と向き合うプロ
舛田雅彦さん(札幌総合法律事務所)
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