実施企業が5割に落ち込んだ「社員旅行」の現在
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社員旅行実施企業は約5割にまで落ち込む
人事労務分野の情報機関である産労総合研究所は、「2014年 社内イベント・社員旅行等に関する調査」の結果を公表しました。社員旅行の実施は1990年代には8割近い時期があったものの、2004年調査では4割弱にまで減少。2009年調査と今回調査では、約5割の実施率となっています。
しかし、社員旅行には社内の「連帯感や一体感の醸成」「コミュニケーションの促進」という効果があり、今後の時代に必要とされる社内行事だと考えられます。
社内イベントに積極的か消極的かで、職場環境にも大きな差が
先日、顧問先の社員旅行に招待され、実際に様子を観察してきました。終電を気にせず酒を飲み、一緒に風呂に入り、経営者の本音を聞き、日頃は電話やメールで業務連絡を済ませている従業員同士が楽しそうに会話をしている姿を見る、経営者の満足そうな様子が印象に残っています。参加者に話を聞いてみても、口々に「来て良かった」という声が返ってきました。
労働力人口が激減していく中で定着率を上げるために、社内のコミュニケーションを活性化したいという経営者は少なくありません。その活性化施策の中でも、社員旅行などの社内イベント実施は重要なことだと認識されているものの、緊急性がないため後回しにされがちです。
現在、多くの労使間や従業員間のトラブルは、コミュニケーション不全から起こっています。その解決策として、社内イベントの実施に積極的に取り組む会社とそうでない会社の職場環境は、今後大きく差が出てくると考えられます。
社員旅行は経営者、参加者にとっても思い切った決断が必要
一方で、難しい問題もあります。目的から考えても、このような社内イベントは全員参加が必須ですが、24時間365日営業しているコンビニや介護施設などはそれが難しく、公平感を考慮して諦めている場合があります。
また、社員の雇用形態や価値観にも多様性があり、個々の事情や価値観を尊重すればするほど、参加者は少なくなるという矛盾も起こります。強制すればパワハラだと言われかねない時代に、宿泊を含む社員旅行は経営者にとっても参加者にとっても思い切った決断が必要なのです。
なお、旅行代金を全額会社負担にせず、一部を従業員の賃金から控除して、積み立てをする会社もありますが、労働基準法第24条に基づく労使協定が必要となりますので、注意が必要です。
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