参院は衆院のカーボンコピー?「良識の府」はどこへ
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参議院が「衆議院のカーボンコピー」と言われるワケ
我が国は、立法府たる国会について、衆議院と参議院の二院制を採用しています。参議院は、衆議院の判断をチェックし、これを補完するという役割を担っております。「良識の府」と呼ばれる所以です。参議院の発足当時は、無所属議員を中心に結成された最大会派により独自性を持っていました。しかし、選挙を重ね、選挙制度も改正されるに従い、政党色の強いものとなって、党派構成が衆議院とほとんど変わらなくなってしまったことから、独自の影響力を発揮することがなくなり、党本部の決定に沿って衆議院と同じような審議を繰り返す「カーボンコピー」と言われるようになりました。
もちろん、近年のような衆参のねじれ現象が生じている場合は、カーボンコピーといった批判は当たりませんが、それは、野党が参議院で過半数を占めているからにほかならず、衆議院で可決された重要法案が参議院では可決されずに政治の停滞、政治の空白を生んでしまっています。与党としては、法案を通しやすくするために参議院でも過半数を占めることを望むようになり、そうなると再び「カーボンコピー批判」が沸き起こってくることになります。
「良識の府」である参議院でなければ「不要論」加速も
参議院は「良識の府」であって、衆議院のカーボンコピーであってはならない、というのが本来の姿なのですが、政党から推薦を受けて「衆議院議員選挙」に立候補したにもかかわらず落選してしまった候補者が、今度は同じ党から「参議院議員選挙」に立候補して当選していく姿を見ると、今の政党政治の仕組みが変わらない限り、カーボンコピー状態が続くことは避けられないと思われます。現状では「参議院不要論」が出るのも仕方がありません。
参議院は議員の任期が6年とされ、解散制度もないことから、中長期的な展望に立ってじっくりと審議することが期待されており、その存在意義を否定することはできないでしょう。しかし、これを十分に発揮するためには政党の影響を受けない仕組みを作る必要があるのと同時に、各議員がその6年もの間、どのような政策活動をしているのかということを国民の側できちんと監視できるようにすることも求められるのかもしれません。
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