点数主義からの脱却へ 大学入試改革に覚える違和感
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大学入試改革などを議論「中央教育審議会」の答申素案が明らかに

10月23日、大学入試改革などを議論している「中央教育審議会」の答申素案が明らかになりました。まず、難易度が高い大学への入学希望者に対しては、センター試験を変えた「大学入学希望者学力評価テスト」(仮称)を年に複数回実施。教科別のテストだけでなく、教科の枠組みを超えた「総合型」の問題を導入します。また、回答方式もマークシート式だけでなく、記述式を加える予定とのことです。
その上で、各大学の個別試験には、面接・小論文・集団討論などを実施し、受験生の「主体性・多様性・協働性」などを重視して選抜することを求めています。さらに個別試験で学力テストを課したい場合には、「記述・論述式」が推奨されているようです。その他、TOEFLなどの民間実施の試験の活用も考えられています。一方で「高校基礎学力テスト」(仮称)も新設し、主要6教科を高校2年生から年2回程度実施、基礎学力の定着を目指すとのこと。このテストは、難易度が低い大学の入試でも利用されるようです。
受験時に「何でもかんでも」求めても学生側が対応できるのか疑問
さて、今回、中教審答申素案が目指している「多面的評価の大学入試」は、知識量を中心に合否を決めてきた試験からの脱却を図る目的で作られたものですが、少し理想に走りすぎている感が否めません。確かに、日本国内、ひいては世界で活躍できる人材を育成したいと考え、そこから制度を組み立てれば、大学受験時に求める内容がこれほど多岐にわたるのにも納得がいくようにも思われます。しかし、現実的に考えると、違和感を覚えてしまうのです。
というのも、高校生に課す試験として、これに対応する能力を身につけるというのは、年齢的、精神的、そして時間的に、かなり難しいと思われるからです。例えば、記述・論述方式という回答方式を見てみても、それにきちんと回答できるようになるためには、あくまでしっかりとした知識・考え方・解き方の土台があり、その上での表現力を身につけないといけません。現行の入試形式でも、それが求められている一部の上位大学はあるものの、応えられている学生はほんの一部でしょう。そのため、結局のところ、その回答方式での差はさほどなくなり、合否の分かれ道はもっと基本的なところで決まっているも事実です。
つまり、いわば「何でもかんでも」求めたところで、学生側が対応できなければ、結局は差がほとんどつかず、むしろ中途半端な入試になる恐れもあります。
理想を描き、それを押し付けても、ただの「改悪」にしかならない
昨今、「ゆとり教育」にはじまり「推薦入試」の横行なども「改革」という名の下、さも正当性があるかのように言われてきました。しかし、「ゆとり教育」の本来の目的である「個性の伸長」も、「推薦入試」による「点数主義に走らない入試」も、実際にはあまり成功しているとは言えません。どれも要因は、理想を追い、現実的な面を軽視している点にあるように思われます。
理想を描くことは、もちろん大切です。しかし、あくまで「現実から理想に近づけるためにはどうしていけば良いのか?」といった視点をもっと重視して制度設計をすべきでしょう。理想を描き、それを押し付けても、改革はただの「改悪」にしかなりません。そして、そのせいで制度に振り回され犠牲になるのは、そこで頑張る生徒に他ならないのです。点数主義からの脱却を目指す点に異論はありませんが、今回は、もっと現実面を考慮し、「今の生徒の位置からどう導くか?」を考えてほしいと思います。
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