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全国初「自転車保険」義務化の実効性は?

県内の自転車保険加入率は24%。4台に1台しか加入していない

全国初「自転車保険」義務化の実効性は?

自転車といえば、これまで自動車との関係で「交通弱者」として見られてきましたが、昨今は自転車と歩行者との事故が増え、「加害者」の立場になることが多くなっています。

最近の統計によると、交通事故全体に占める自転車事故の割合は2割程度。そのうち自転車が加害者となる割合が15%を超えており、全国で年間2万件以上もあります。自転車が加害者となる原因の多くは、安全不確認、一時不停止、信号無視などであり、その瞬間に、便利で手軽な「乗り物」が「凶器」に変わってしまうのです。

ところが、昨年の兵庫県の調査では、自転車が加害者となる場合に備えた自転車保険の加入は低迷しており、県内の加入率は24%にとどまるそうです。なんと4台に1台しか保険に加入していない計算になります。

自転車保険への加入を義務化するのは全国初の試み

これを受けて、このほど井戸敏三・兵庫県知事は、自転車の購入者に対し自転車保険への加入を義務づける条例案を来年(2015年)2月にも県議会に提案すると表明しました。兵庫県によると、自転車保険への加入を義務化するのは全国初の試みであり、今後、兵庫県が保険会社を公募のうえ、自転車事故の被害者に賠償金を補償するための賠償責任保険を新設する方針だそうです。

保険料は年間1500円~2000円程度になる見込みで、自転車販売店から自転車購入者に保険加入を勧めてもらう予定です。ただし、保険未加入者に対する罰則を設けることは見送られました。

神戸地裁で9500万円もの高額賠償の判決が出されたことも

ところで、兵庫県内だけを見ても、自転車と歩行者との事故は年間175件も起きており、この10年間でほぼ倍増の勢いです。自転車事故の賠償額も高額化の傾向にあり、けっして「たかが自転車事故」などとは言えない状況です。昨年(2013年)7月に、神戸地方裁判所で9500万円もの高額賠償の判決が出されたことは記憶に新しいでしょう。親が小学生に買い与えた「マウンテンバイク」が、被害者に9500万円もの大きな損害を与えた事件であり、その損害については親に全面的に賠償責任があることが明確となったものです。

自転車は気軽で便利な乗り物である反面、いつでも「凶器」に変貌する可能性をもつ「危険な車両」であることを忘れてはいけません。兵庫県が進める自転車保険の「加入義務化」は、時代の流れの中で当然の要請だと思われます。ただし、今回、罰則規定が見送られたことで、「保険加入義務化」がどこまで浸透するのか、その実効性を疑問視する向きもあります。

「加入義務化」を促進するため「罰則」も導入されて然るべき

誰もが被害者にも加害者にもなり得るのが自転車事故の特徴です。不幸にして事故が起きてしまった場合でも、自転車の側で保険に加入しておれば、少なくとも被害者が「泣き寝入り」を強いられることはなくなります。年間1500円~2000円という低額な保険料で被害者に対する損害賠償が補償される保険ができるのであれば、その「加入義務化」を促進するため、一歩踏み込んで「未加入者に対する罰則」も導入されて然るべきでしょう。

もはや、「無保険の自転車は街を走ってはいけない」という新しい時代が到来したと、私自身は考えるのですが。

職人かたぎの法律のプロ

藤本尚道さん(「藤本尚道法律事務所」)

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