橋下氏vs桜井氏で注目「在日特権」とは
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在特会が主張する在日韓国人・在日朝鮮人の「特権」
橋下大阪市長と在特会(在日特権を許さない市民の会)の桜井会長とが大阪市役所で対談をしようとした(そして罵り合って終わった)というニュースがありました。いわゆるヘイト・スピーチの問題を話し合う機会だったそうです。
そもそも、在特会の主張する「在日特権」というのは何なのでしょうか。何かの法律で「在日特権」というものが定められているわけではありませんし、法律学や行政学などの学問上の概念でもありません。在特会は、「在日」(在日韓国人・在日朝鮮人)に「特権」があると主張しています。「特権」とは、一定の身分や立場の者あるいは特定の者に与えられる、他と比べて特別な利益のことです。具体的な特権として、?特別永住資格?朝鮮学校補助金交付?生活保護優遇?通名制度などを挙げ、中でも特別永住資格が問題であると主張しています。
中でも在特会が問題視する「特別永住資格」とは
日本国籍を有しない人つまり外国人が、適法に日本に滞在するためには、原則として「在留資格」を有していなければなりません(出入国管理及び難民認定法)。観光目的の短期滞在や法務大臣が認める永住者など27種類の滞在資格があります。特別永住者は、「日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法」により認められる在留資格です。「日本国との平和条約」というのは、サンフランシスコ講和条約(昭和27年発効)のことです。特別永住者には法定特別永住者と法務大臣の許可を受けた者の2パターンがあります。
特別永住者は、太平洋戦争の降伏文書に調印した昭和20年9月2日(敗戦時)以前から日本に在留していた者で日本国籍を失った者(韓国・朝鮮人の他に中国人や台湾人もいます)やその子孫で、引き続き日本に在留する者を対象にしています。永住者と特別永住者の違いは、特別永住者には常時携帯しなければならない在留カードではなく特別永住者証明書が発行されて常時携帯義務が無いことや、退去強制事由が限定的となっていること、再入国許可の有効期間の上限が1年長いことなどです。
議論は自由。日本の国会や政府、日本国民に対して問題提起すべき
もともと日本国籍を有していた人やその子孫で日本に在留している人について、他の外国人と異なる取扱いをすることは、不合理といえないでしょう。わざわざ「特権」などという大仰な言い方をするほどのものではありません。もちろん、特別永住者制度の継続や、特別永住者の要件・内容の当否などについて主張し議論するのは、自由であるべきです。しかし、特別永住者に対して非難の矛先を向けるのは筋違いです。そのような特例を認めているのは日本国の法律ですから、日本の国会や政府、日本国民に対して問題提起をすべきです。
特別永住者のこと以外の「在日特権」についても、個別具体的に事実・制度を確認して問題の有無を検討すれば足ります。その議論においても、法令を作り運用している国・自治体の問題として扱うべきでしょう。生活保護の件で、在特会は日本人の自殺者が3万人いるなどと持ち出しているようです。これは日本政府の失政として論じられるべきものであって、在日朝鮮人らの責任ではないでしょう。日本に対して敵対的な言動を行っている国やその政治家などに悪感情を持つのは自然としても、日本社会で住み暮らす一部の人々にその悪感情をぶつけるべきではないでしょう。
また、在日朝鮮人などに関する議論がタブーとされるのは、それはそれで問題ですし、表現規制がなされるべきではありません。在特会が「在日特権」の問題提起をするための集団なのであれば、その言動が表現規制を広げたいと思う人たちの口実に利用されるのは不本意なのではないでしょうか。
中小企業をとりまく法的問題解決のプロ
林朋寛さん(北海道コンテンツ法律事務所)
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