「うちわ問題」松島氏アウトで蓮舫氏セーフのワケ
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松島みどり前法務大臣が「うちわ」問題で辞任
松島みどり前法務大臣が、自身の似顔絵や政策を記載した「うちわ」を選挙区内で配布していたとして問題となり、政治責任を取って辞任するという一幕がありました。この問題について、民主党の蓮舫議員など、複数の議員が選挙でうちわを配ったとしてネットで話題になっていますが、公職選挙法に違反する等の指摘はありません。
同じうちわなのに、なぜ結論が異なるのか。この問題を整理してみます。
財産的価値の有無という意味で違いがある
議論が錯綜していますが、端的に整理すると(1)配布した物に財産的価値があるといえるか(2)法定のビラの要件を満たしているか、ということになります。まず、松島氏がアウトである一方、蓮舫氏がセーフとなるのは、配布したものに財産上の価値があるか否かという点になります。
公職選挙法は、選挙人に対する寄付を禁止しています(公選法199条の2)。松島氏のうちわは、寄付に該当する可能性があるとされています。また、選挙期間中や選挙に近い時期であれば、買収・利益誘導罪(同法221条等)に該当する可能性も出てきます。なぜ、うちわが寄付に当たるといえるかというと、うちわに財産的価値があると考え得るからです。報道等で、うちわの形や骨組みが云々と言われるのはそのためです。
逆に蓮舫氏がセーフな理由は、報道で見る限り、厚紙を円形に切り抜いて「うちわとしても使えるもの」にとどまっているため、寄付の対象となる財産的価値のあるもの、とは言い切れないためだと思います。私個人としても、厚紙を切り抜いただけの「うちわ」であれば、一度くらい扇いですぐ捨てることが多いですが、骨組みがあるうちわは「また使えるかも」と思って保管することがありますので、財産的価値の有無という意味では違いはあるでしょう。
松島氏のうちわに証紙を貼ったとしても適法とはならない
なお、蓮舫氏のうちわについては、証紙の有無が議論されていますが、これは利益供与とは別問題です。円形の厚紙に政策や写真を印刷して配布するのであれば、これは「選挙ビラ」にあたるため、選挙管理委員会が発行する証紙を貼らないと違法なビラとなってしまいます。ですので、財産的価値がなくても選挙ビラに該当する場合は証紙を貼る、ということに過ぎません。松島氏のうちわに証紙を貼ったとしても適法とはならないのです。
しかし、この問題の本質は、うちわの形状や価値ではなく、国会議員、特に法の執行を司る法務大臣の職に任じられた者が、公職選挙法に違反する行為を行っていたということでしょう。もちろん、任命者の任命責任もあると考えます。公選法の違法性としてはギリギリアウトという問題かもしれません。しかし、政治的責任という面では軽視すべきではなく、茶化して終わるべきでもないと考えます。
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