石綿被害、国の責任認定 早期救済へ大きな一歩
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石綿(アスベスト)被害に関し、初めて国の責任を認める判決
今月9日、最高裁は石綿(アスベスト)被害に関し、初めて国の責任を認める判決を下しました。裁判の争点は第一に、「国が行った石綿に対する3つの安全対策が違法と評価される程度に遅かったかどうか」です。具体的には、(1)昭和46年に事業者に対して排気装置の設置を義務付けたこと(2)昭和63年に工場内の粉じん濃度の規制を強化したこと(3)平成7年に事業者に対して防塵マスクの着用を労働者に義務付けたことの3つの安全対策を行った時期が、当時の医学的な知見などに照らして適切なものであったか否かという問題です。
第二に、救済される石綿被害者の範囲に関する問題です。これは、仮に第一の争点につき、国の安全対策が遅きに失したとして違法であるとして、一体いつの時期から違法状態であったかという問題です。言い換えれば、違法状態であると認定された期間に労働者であった者に対して国は損害賠償責任が生じるということになりますので、その時期の特定は、どれくらいの範囲において救済が受けられるかという意味で、労働者であった原告にとっては非常に重要であるといえます。
判決では、争点第一の(1)の安全対策についてのみ、違法と評価できる程度に遅かったと判断しました。そして、争点第二について、労働大臣は昭和33年5月26日には、省令制定権限を行使して排気装置を設置することを義務付けるべきであったと認定しました。すなわち、昭和33年5月26日から昭和46年4月28日に排気装置の設置を義務付けるまでの間、労働者であった人については、国の責任を認めたのです。
今後、石綿被害に関する救済が早まることが期待される
国の責任が認められなかった期間に石綿被害にあった人については、残念な結果となってしまいましたが、最高裁がこれだけ国に責任が生じる期間を明確に示したことには大きな意義があります。現在、全国各地で係争中の石綿被害に関する裁判でも、このたびの最高裁の判断は大きな影響を及ぼすことは間違いありません。今後、石綿被害に関する救済が早まることになると思われます。
この点、塩崎厚生労働大臣は、損害額を決めるために高裁へ差し戻しとなった原告らに対して、勝訴が確定した原告と同じ基準で和解を申し入れる方針であることを述べております。また、今回の訴訟の原告ではない元労働者らに対しても、このたびの最高裁の判断を適用し、賠償すべき人に対しては和解を申し入れ、早期に賠償を行う意向であるとしています。
全国で展開されている石綿被害に関する訴訟にとって、このたびの最高裁判決は早期救済という意味において大きな第一歩となると共に、揺るぎない一つの指標となることと思われます。
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