暴行客にラーメン提供、犯罪看過は罪にならない?
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ラーメンを提供した店に対しても批判が続出
先日、東京北区にあるラーメン店で他の客と口論になって暴行し、内蔵を損傷するなどの重傷を負わせた被疑者が、その後、ラーメンを注文し、「相手は死ぬから最後の晩餐だ」と言って完食したという事件が報道されました(被害男性客は搬送先の病院で死亡)。
この報道に関し、直接暴行を行った被疑者に対するだけではなく、ラーメンを提供した店に対しても「店も店だよな。通報したり介抱したりしろよ」などという批判がインターネット上で噴出しているということです。
そもそも、ラーメン店の行為について犯罪が成立するためには、ラーメン店側に、犯罪を通報することや被害者を救助することについて法律上の義務が存在することが前提となります。このような義務が認められる場合に限り、義務を遵守する行動を取らずに(=不作為)ラーメンを提供したことが犯罪となるのです。
通報義務・救助義務はあるのか?
一般的に犯罪事実を発見したからといって、一般人に通報義務は生じません。刑事訴訟法239条1項では、「何人も犯罪があると思料するときは告発することができる」としていますが、これは告発・通報することを「義務」とする規定ではありません。
では、被害男性客を救助する義務があるでしょうか。救助義務が認められるには、交通事故の被害者と加害者間のように、法律上救助すべき特別の関係が必要です。本件では、ラーメン店側が直接の加害者ではありませんし、被害男性客がラーメン店側の完全な支配下にある閉鎖された空間にいたわけでもないのですから、ラーメン店には救助義務も認められないと考えられます。
本来飲食店には、客に対して安全な飲食物を提供することはもちろん、店内において危険な状況に陥らないように配慮する(民事上の)安全配慮義務が認められるとするのが一般的です。しかし、本件のような成人の客同士の口論の末の暴行にまで、ラーメン店側に客同士がケンカをしないように配慮すべき安全配慮義務が存在したのに、これを怠ったと判断されることはないでしょう。
以上のことから、犯罪看過について、ラーメン店側に刑法上の犯罪の成立や民法上の損害賠償責任などは認められないと解されます。
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