ごみの「開封調査」実施、憲法上の問題も
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ごみの「開封調査」を実施する自治体が出てきた
天然資源が無尽蔵ではないにもかかわらず、廃棄物の発生量が高水準で推移し、廃棄物処理施設の立地も困難な状況があります。このような背景がある中で、環境への負荷を減少させて「現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に寄与することを目的」に、平成12年5月に「循環型社会形成推進基本法」が制定されました。
その10条が「地方公共団体は、基本原則にのっとり、循環資源について適正に循環的な利用及び処分が行われることを確保するために必要な措置を実施するほか、循環型社会の形成に関し、国との適切な役割分担を踏まえて、その地方公共団体の区域の自然的社会的条件に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する」と定めていることを受けて、各自治体でごみの分別・排出がルール化されています。しかし、そのルールに従わない者に対処していくため、ごみの「開封調査」を実施する自治体が出てきています。
ごみの「開封調査」は公権力によるプライバシー権の制限
排出されるごみには、様々な情報が含まれているため、これを調査することは、公権力によるプライバシーの侵害という問題を生じさせます。そもそも、ごみは自らの意思に従って廃棄したものであり、ごみの所有権を放棄したものである以上、そこに含まれるプライバシー情報も放棄したといえるのではないかと考えられなくもありませんが、物の所有権とプライバシーの問題は別ですので、このような考え方は採り得ません。企業の営業活動用に作成された顧客リストというものが、企業の所有物であることと、その顧客リストに記載された情報が、当該顧客にとって保護の対象となるということが別問題であることと同じです。
憲法第13条では「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」と定めており、プライバシー権などの人権も「公共の福祉」のために制限を受けることを認めていますが、その制限は必要最小限度でなければなりません。ごみの「開封調査」は公権力によるプライバシー権の制限となるため、「公共の福祉」のためにやむを得ない必要最小限度の制限といえるのかが憲法上の問題となるわけです。
プライバシー権の制限を必要最小限度に抑える措置が不可欠
ごみの分別・排出のルールは「現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に寄与する」という公益目的のためのものですから「開封調査」自体は仕方がないと思われます。
しかし、闇雲な調査では広範囲にプライバシーを侵害してしまうことになるため、調査の対象をどのように限定していくのか、また、「開封調査」で明らかにされた情報をどのようにして管理し、漏洩しないようにするのかなど、プライバシー権の制限を必要最小限度に抑えるために住民が納得できる措置を講じることが不可欠ということになります。
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