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「統一球」変更で出来高契約は違法に?

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昨年のデータに基づいて結ばれる「出来高制」

「統一球」変更で出来高契約は違法に?

プロ野球選手と球団との間では、その年の成績を前提に次シーズン(あるいは複数年)の年俸などを決める契約が結ばれます。これは過去の成績から将来を予測するものですから、いわば「競馬の予想」みたいな面があります。それならば、現実の成績によって報酬に変化をもたせる方が合理的であり、選手・球団いずれも納得ができるでしょう。これが「出来高制」と呼ばれるもので、一定の年俸のほかに成績に応じて報酬を加算するタイプの契約です。たとえば、投手は「勝利数」「勝率」「防御率」「セーブ数」「奪三振数」などが出来高の対象になり、打者の場合、「打率」「打点」「本塁打」のほか「得点圏打率」「犠打」「盗塁」などが挙げられます。

この前提となるデータは、個人成績だけではなく、プロ野球全体の成績も含まれます。たとえば、「年間10勝」という投手の成績が、相対的に価値があるのかは、プロ野球全体の成績によって違ってきます。打者の成績についても、同じことが言えるでしょう。

「飛ぶボール」への変更は、契約にかかわる「重大な要素」

昨シーズンは、「統一球」の反発係数の平均値が、基準値の下限を下回っていたようです。そのため、昨年は「投手有利」で、防御率1点台の投手が多く出た反面、本塁打などの打者の成績は低迷しました。よって、今季の「出来高」の設定は、投手に厳しく、打者に甘くなっていることが容易に推測できます。しかし、「飛ぶボール」への変更により、今季は投手にとって好成績が難しくなりますが、打者は予想以上の結果が出るはずです。まさに、投手に不利で打者に有利な「条件変更」が、知らない間に行われたことになります。

これは、契約にかかわる「重大な要素」の変更です。今季から「飛ぶボール」に変わるとわかっていれば、出来高をめぐる数値設定の際にも考慮されたはずだからです。もっとも、打者にとっては有利な条件変更なので、打者側から契約の瑕疵(かし)が主張されることはないと思われます。

今季の出来高契約は違法・無効に

しかし、投手にとっては死活問題です。「出来高制」の数値を決めた後で「飛ぶボール」に変更されたわけですから、投手側には、契約を結ぶ上での「重大な要素」について「錯誤」があったと言えます。投手は結果的に「騙された」のと同じですから、今季の出来高契約が違法・無効であるとの主張も十分に成り立つでしょう。

なお、12球団側も、ボールが変更されることを知らなかったとの一部報道があります。仮にそうだったとしても、投手側の「錯誤」が消えて無くなるわけでなないので、出来高契約が違法・無効になるとの結論に変わりはありません。

職人かたぎの法律のプロ

藤本尚道さん(「藤本尚道法律事務所」)

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