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厚生年金、対象拡大の是非

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厚労省、厚生年金の対象を拡大する動き。しかし、反対意見も

厚生年金、対象拡大の是非

現在の年金制度では、従業員を使用する企業に勤務する70歳未満の人が厚生年金保険に加入することになっています。加入には一定の要件があり、労働契約などで定められた通常の労働者の所定労働時間と所定労働日数の4分の3以上であるというものです。基本的には、1週間の法定労働時間は40時間なので、30時間以上でアルバイト、パートの名称や、その人の意思に関係なく加入しなければなりません。

このように現在の制度では、扶養の範囲内で働くようなパート主婦や非正規労働者は厚生年金に加入することができず、将来的に低年金や無年金になってしまう恐れがあります。そこで、2016年10月1日以降は、従業員501人以上の企業で、1週間の所定労働時間が20時間以上で月収が8万8,000円以上の人が厚生年金に加入することになりますが、未加入労働者の1.7%しかならないので、効果は大きくありません。

厚生労働省は、保険料を払わない第3号被保険者を減らすために、月収のみで適用させるなどの案を例示し検討しています。しかし、この動きに対してパート労働者を多く雇用している業種を中心に強い反対があります。なぜなら、企業が保険料の半分を負担しているために人件費の高騰につながるからです。労働者にとっても保険料の負担が生じ、配偶者控除や支給されていた配偶者手当がなくなり家計の負担が増えるため、反対意見も出ています。

厚生年金の対象拡大は、労使双方にマイナス面ばかりではない

確かに目先のことを考えると労使双方の負担が増えることになりますが、マイナス面ばかりではありません。企業にとっては、短時間労働者に対する待遇改善になり生産性の向上につながることが期待されます。また、年末には、被扶養者の認定基準を超えないよう勤務を調整することで業務に支障が出ることを防ぐことができるでしょう。短時間労働者にとっては厚生年金に加入することで将来は国民年金に加え、保険料と加入期間に応じた厚生年金を受け取ることができます。国民年金だけでは満額でも月額64,400円(平成26年度)だけしかなく、年金だけで生活をしていくにはかなり厳しいものとなります。

最近では、「老後破綻」という言葉が聞かれるように、年金収入より医療費などの支出が多く、貯金を取り崩しながら食事も十分にできないような実態があります。労働力人口の減少や女性の活用という課題があり、年金制度を改正していかなければなりませんが、今後、誰にとっても中立で公正な制度となるよう考えていく必要があるでしょう。

リスク対応型就業規則作成と障害年金請求の専門家

松本明親さん(社会保険労務士 松本事務所)

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