敷金ルール明文化でトラブル防止は期待できる?
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敷金および原状回復義務についてルールの明文化を行う
法制審議会の民法(債権関係)部会が検討している改正要綱原案において、敷金および賃貸借終了後の収去義務原状回復に関するルールの明文化を行う方向で検討されています。改正要綱原案の規定の概要は以下の通りです。
■敷金について
賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭と定義し、(1)賃貸契約が終了し、物件の返還を受けたときには、賃貸借契約に基づいて発生した未払賃料や原状回復義務などの賃借人の金銭債務の額を控除した残額を返還しなければならないとする規定、(2)賃貸人は、賃借人が賃貸借契約により生じた金銭債務を履行しないときに、賃貸人は、敷金を弁済に充てることができるが、賃借人の側からは敷金で弁済に充てるよう請求することはできないとい規定を定める。
■原状回復義務について
現行民法616条が準用する同法598条は「借主は、借用物を原状に復して、これに附属させた物を収去することができる」となっているのを、(1) 附属させた物の収去権、収去義務の定めと原状回復義務の規定に分け、 (2) 原状回復義務の損傷の対象から通常の使用による損耗、経年変化によるものを除くこと、かつその損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは原状回復義務を負わないとする。
敷金ルール明文化による影響は?
敷金に関する上記規定は、概ね、これまでの判例の解釈に沿って明文化したものです。そのため、明文化によって、敷金のルール、手続が大きく変更されるものではありません。また、原状回復義務についても、従前から賃貸借に当然伴う通常損耗(通常使用によるカーペット・壁・畳・襖の汚れ等)については、原則としてその修繕義務を負わないとされ、国土交通省による「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」にもその考えが示されていたところです。
改正要綱原案の規定は、判例や実務の考えに沿ったものであり、これに反する特約の効力を一切否定するという強行法規的な規定も見当たらないことから、それ自体で実務を根本的に変化させるというものではないといえるでしょう。
しかしながら、このようなルールが明文化されることにより、敷金および原状回復義務の考え方の消費者等への周知が進み、契約締結や退去の場面で、賃借人の法律主張の機会を増加させるという効果はあると思います。
また、特に、消費者契約の場面、例えば、建物の明渡の際に当然に何割かの敷金を控除して残額を返還する特約である敷引特約等、明文化されたルールと異なる場合の有効性の判断において、どのような影響があるかどうか、その後の裁判所の判断に注目しておくべき改正案ではないかと考えるところです。
企業法務と事業承継支援の専門家
大西隆司さん(なにわ法律事務所)
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