面会交流の調停4割が不成立。今後の対策は
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この10年で面会申請の数は倍増
子どもを持つ夫婦が離婚したり、別居に至ったりした場合、子どもと離れて暮らす親が、子どもと会って交流を持つことを「面会交流」といいます。面会交流は、両親が離婚したり別居したとしても、子どもが両親と交流し、両親から愛情を受け続けられるようにするための大切な機会となるべきです。親同士あるいは、離れて暮らす親と子どもが、連絡を取り合って、自分たちで円満に面会交流が実施できれば、それに越したことはありません。
平成24年4月施行の改正民法には、協議離婚にあたって、協議するべき事項として、面会交流が明示され、必要事項を定めるにあたっては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない旨が規定されました。しかし、離婚や別居に至った夫婦間では、様々ないざこざや事情が影響して、「面会交流の協議ができない」や「協議したのに実施されない」あるいは「実施されてもほんのわずかの機会でしかない」といったケースが少なくありません。
このように面会交流のスムーズな実施に向け、当事者間で話し合いもできない場合には、家庭裁判所における面会交流の調停・審判を利用する方法があります。この10年で、家庭裁判所に面会交流の事件を申立した数が2倍ほど膨らんだといいます。
裁判所や弁護士が個々の事案に即した対応を検討することが必要
家庭裁判所の調停では、調停委員や調査官が、両親双方の話を別々に聞き、子どもの意向や生活状況を考慮した上で、面会交流の実施の有無や実施方法等の話し合いを支援するのですが、近年、面会交流調停の約4割が不成立に終わってしまうそうです。そもそも離婚や別居に至ったということ自体、両親間の不仲が改善されなかったわけですが、両親間の感情的対立が面会交流に影響を与えているケースは、別れた親同士の損得ではなく、あくまで子どものために実施するものであることをじっくりと説明することで、親同士の紛争と面会交流とを切り離して考えてもらうことが大切でしょう。
また、DVや不貞行為によって離婚や別居に至ったケースでは、親同士の単なる感情的対立とは言い切れない事案もあるため、慎重に把握して、子どもの利益を見誤らないようにしなければなりません。他方、子どもへの暴力的振る舞いや言動が見られたケースについては、面会交流=子どもの利益とはならないこともあります。一口に面会交流といっても、当事者のおかれた背景事情は様々であり、関与する裁判所や弁護士は丁寧に聞き取り、当事者の意向等を慎重に把握した上で、個々の事案に即した対応を検討することが必要といえます。
離婚や相続に強い女性弁護士
柳原桑子さん(柳原法律事務所)
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