厚生年金基金の解散相次ぐ。その背景と影響
厚生年金基金の解散を促す改正厚生年金保険法が施行
4月1日から厚生年金基金の解散を促す改正厚生年金保険法が施行されています。この厚生年金基金は、企業が運営するものですが、国が運営する厚生年金に与える影響は小さくありません。
老後に受け取る年金は、1階部分の国民年金(老齢基礎年金)、2階部分の厚生年金(老齢厚生年金)、3階部分の厚生年金基金となっていますが、すべての企業が厚生年金基金に加入しているわけではありません。厚生年金基金は、厚生年金に加入している企業が労使の合意に基づき厚生年金基金という公法人を設立し、この法人が年金を運用、給付します。大企業単独や、中小企業共同で設立している場合があり、厚生年金に加入している従業員は基金に強制加入することになります。
年金を受け取る時には、国から国民年金と厚生年金の一部が支給されますが、厚生年金の代行部分とプラスアルファ部分が基金から支給され、基金によっては、その上に加算年金も支給されます。掛金は、厚生年金保険料の一部を基金に納めているため、基金に加入していない場合と変わりありません。また、代行部分以外の加算部分は企業が全額負担しています。このように、厚生年金基金は従業員の老後の生活を手厚く保障する制度となっています。
年金が消えて受け取れなくなるわけではない
しかし、少子高齢化の影響で年金を受け取る人が増えているにもかかわらず、保険料を支払う被保険者が減少し、企業の業績悪化も重なって基金の積立金が不足するようになりました。平成24年にAIJ投資顧問の詐欺事件で多くの預けていた基金を失ったことをきっかけに、今回のように解散をしやすい制度を導入することになったのです。この制度は、今年度から5年間の時限措置で、積立金の穴埋めを最大30年間に分割し解散しやすくするものです。
この影響で「年金が消えて受け取れなくなるのでは」という誤解があるようですが、実際は違います。基金が支払う代行部分(厚生年金相当分)は、基金からではなく国が支払いを引き継ぐからです。つまり、どこからの支払いであるかが変わるだけであり、基金に加入していない人に比べて損をするわけでもありません。
ただ、基金が解散すると基金独自のプラスアルファの部分の支払いが終了し、予定していた年金の一部が受け取れなくなるという不利益は被ることになります。厚生労働省の標準モデルの試算でも、月に7千円から1万6千円の年金が受け取れなくなるので、その程度も大きいでしょう。今後は、厚生年金基金の設立はできなくなり、多くの基金は解散することになります。
基金の判断によりますが、加入者自身の自己責任で運用指図できる確定拠出年金に加入することができます。所得税、住民税の軽減のメリットがあるので選択肢の一つになり得るでしょう。
リスク対応型就業規則作成と障害年金請求の専門家
松本明親さん(社会保険労務士 松本事務所)
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