警戒区域指定促進へ。土砂災害防止法の問題点
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平成11年「広島災害」をきっかけに公布「土砂災害防止法」とは
平成11年6月29日に土砂災害発生件数325件、死者24名を出した、いわゆる「広島災害」をきっかけに、翌年、国民の生命および身体を保護するため「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律」(土砂災害防止法)が公布されました。
この法律は、土砂災害のおそれのある区域について危険の周知、警戒避難体制の整備、住宅等の新規立地の抑制、既存住宅の移転促進等のソフト対策を推進しようとするものです。都道府県知事に対し、おおむね5年ごとの基礎調査を実施させた上で、急傾斜地の崩壊等が発生した場合、住民等の生命又は身体に危害が生ずるおそれのあるとされる「土砂災害警戒区域」、また、建築物に損壊が生じ住民等の生命又は身体に著しい危害が生ずるおそれがあるとされる「土砂災害特別警戒区域」の各指定権限を付与しています。
いずれも指定された場合には公示されることになっているのですが、「土砂災害警戒区域」の指定がなされると、関係のある市町村における災害対策基本法による市町村地域防災計画の中で、土砂災害防止のために必要な警戒避難体制等に関する事項を定めるものとされます。さらに「土砂災害特別警戒区域」の指定がなされると、区域内で特定の開発行為を行うにあたり都道府県知事の許可が必要となるなど、国民の財産権に対する制限が設けられています。
集中豪雨による土砂災害に備えて法改正が急務
8月20日未明に土砂災害に見舞われた広島県では、土砂災害危険箇所とされる約3万2000箇所のうち37%しか警戒区域に指定されておらず、今回の災害箇所の一部も指定されていなかったことから、土砂災害防止法の問題点が指摘されています。
すなわち、警戒区域の指定は、基礎調査(急傾斜地の崩壊等のおそれがある土地に関する地形、地質、降水等の状況及び土砂災害の発生のおそれがある土地の利用の状況等に関する調査)に基づいて行われるため、調査にあたっては住民の協力や理解を得ながら進める必要があるところ、ひとたび警戒区域に指定されてしまうと地価の下落を招いてしまうため、住民の抵抗に遭ったり、限られた人員や予算のもとで行われるため、指定が順番待ちになるなどの問題が生じているようです。
平成11年の「広島災害」をきっかけに国民の生命及び身体を守るための法律を制定したにもかかわらず、上記のような問題を抱えていることで今回の被害が拡大したのであれば、いつ何どき起こるかもしれない集中豪雨による土砂災害に備えて、都道府県知事による警戒区域の指定を迅速に進められるように、早急に法改正を含めて問題点を解決する方策を講じる必要があるといえるでしょう。
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