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「苦しいなら学校行くな」保護者の判断は正しい?

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不登校の児童生徒数が増加。まず子どもの気持ちを受け止める

「苦しいなら学校行くな」保護者の判断は正しい?

文部科学省の最近の「学校基本調査」 によれば、不登校の児童生徒数が増加に転じました。これを受けて専門家は、「いじめ自殺が社会問題になり『それほど苦しいなら学校に 行かなくても良い』と考える保護者が増えた」「競争が激化し、より疎外感を持つ子が増えているのでは」などと、増加の理由を分析しています。

不登校の原因は様々ですが、いじめに対する学校側の対応に問題があった昨今の報道があれば、このような親の気持ちが出てくるのは、ごく自然であると思います。また、いじめ以外の場合でも、親の対応としては、単に学校に行かせることに焦るのではなく、まず子どもの「行きたくない」という気持ちを受け止めた上で、子どもに何が起こっているのかを慎重かつ冷静に汲み取っていくことが大切です。

文科省の調査によれば、2014年度の小中学校の不登校児の全児童数に対する割合は、1.12%となっています。これは、奇しくも統合失調症の有病率(全人口に対する患者数の割合)が約1%というのとほぼ同じです。「1学年に100人いれば、そのうちの1人」ということになりますが、これが統合失調症だと「案外多いんだな」という印象になるでしょうが、不登校ではどうでしょうか。「学校に行っていないのが、学年でうちの子だけだ」というのは、シビアに感じられるかもしれません。そういう状況で「行かなくて良い」と言ってやれる気概を示すことは、子どもにとって大きな支えとなるでしょう。ただし、言わずもがなですが、安易に学校を否定するのではなく、「子どもにとって今のところ不登校しかない」という背水の陣を敷いているという意識がなくてはなりません。

子どもの問題に親が正面から向き合うことが必要

子どもは、突然不登校になるのではなく、腹痛や種々の体調不良などを理由に休みたがる「登校しぶり」の時期があるものですが、この段階で適切に対処すると解消する場合も少なくないのです。そのためには、早期に、子どもの学校での様子、今後の対応について親が担任と十分に話し合い、子どもの問題に親が正面から向き合うことが必要です。いじめがある場合には、加害者の子どもへの対応も学校からしっかりとしてもらうことです。

また、不登校の原因として、学校環境の問題だけではなく、子どもの個性や、あるいは親の問題が影響していることも多いのです。いずれにしても、不登校となってしまった場合は、親は背水の陣を敷いて、子どもの個性をどう伸ばすか、困難をどう乗り越えさせるか、自分たちのあり方はどうか、といった問題に取り組んでいくことが求められます。

このように不登校が発生すれば、子どもにとっても親にとっても試練の時となりますが、苦しい場合にはカウンセラーなどの専門家の助けを借りることもできます。種々の専門機関で相談を受けた子どもを1年以上にわたり追跡調査した研究結果を20例(1980年以降のものに限る)集めて評価を行った研究によると、概ね70%前後の子どもは社会適応良好という結果が出ています。逆に残りの30%のケースの中で成人してから精神科に来院する人に会いますが、「早期に適切な対応をしておけば」と考えさせられることも多々あります。

子どもに万一、「登校しぶり」が起こったら、思い切って早期の対応をし、どうしても一時期に不登校をしなければならない時も、希望を持って「行かなくても良いんだよ」と言ってあげてください。

池上司

精神科医・ユング派分析家として心理療法を行う専門家

精神科医

池上司さん(池上メンタルクリニック)

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