「若者限定無料サービス」が増えるワケ
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若者限定サービスは団塊世代の大量退職によって登場した
「20歳はゴルフ無料」「19歳限定!スキーリフト券が無料」「21歳はビール1杯目が無料」のように、今、若者限定のサービスが増加しています。これらは、団塊世代の大量退職によって登場したサービスと言えます。まず、団塊世代の人たちこそ、ゴルフやスキー、カフェバーなどのブームをつくってきました。今のように経費の締め付けも厳しくない時代は、会社のお金で飲みに行くことができました。年功序列は崩壊したといっても、給料水準が高い先輩に新人はおごってもらうことが普通でした。
会社も、バブル景気で買った保養施設の稼働率を上げようとし、レクリエーションの一環としてスキーやゴルフは費用の一部を会社が補助していたくらいです。出身校にもOBとして顔を出し、アルバイト先でも先輩に誘われて飲み会や泊まりのスキーに連れ出されるなど、若い人は社会勉強との理由でさまざまな場所へ引っ張り出されていました。
待つだけで新規顧客が獲得できたサービス提供側の状況が変化
現在、団塊世代の説教好きたちが退職し、その反動が表れています。団塊の次の世代は「新人類」と呼ばれたほど、異なる価値観を持っていました。そして、積極的に後輩を連れて行かない世代でもあります。同僚とは仲良くするが、後輩とは積極的にコミュニケーションをとらない。社員旅行には行きたくない、会社の飲み会には付き合わない。これが、長く団塊世代の説教にウンザリしていた反動です。
加えて、バブル崩壊の影響で金回りも悪くなりました。まずは、自分の生活を守らなければなりません。結果、わざわざ自腹を切ってまで、後輩におごろうとする人は激減しました。これが、サービス提供側にも影響を及ぼし始めます。今までは、先輩が若い後輩を連れていくため、店は待っているだけで若い新規顧客が獲得できました。ところが、そうした若い人を店に連れて来る世代が退職していきます。
店としても、手をこまねいていられません。どうすれば、若い人に来てもらえるか。手っ取り早いのは、無料にしてしまうことです。体験さえしてもらえれば、以後、来店へのハードルは下がります。店としても最初は無料でも、リピーターとなってもらえれば充分に元が取れます。一方、既に体験したことがあるような上の世代には、わざわざ無料にする理由は見当たりません。これが、「若者限定無料」の事情なのです。
例えてみれば、鮭が産まれた川を記憶し、帰ってくる帰巣本能のようなものです。鮭の遡上が途絶えていた川に鮭が戻ったというニュースがありますが、これは、鮭の稚魚を手塩にかけて育ててから放流し続けた努力の結果です。若者限定無料も同じように、いずれ、リピーターとなって戻ってくるという期待の表れではないでしょうか。
発想を広げる専門家
木村尚義さん(株式会社創客営業研究所)
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