解雇規制緩和で年収倍増も現実に?人材流動化時代の幕開け
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整理解雇のための、企業に求められる4つの厳しい要件
現在は整理解雇をするにあたって、4つの要件を満たすことが求められます。それは「人員整理の必要性」「解雇回避努力」「人選の合理性」「従業員に対する説明義務」です。しかし、「解雇が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、解雇権濫用として無効」となります。つまり、会社の経営上、真に止むを得ないものと客観的に認められる場合を除いては整理解雇を行うことが許されないのです。そして、それを判断するのは裁判所なのです。
雇用の安定以前に「企業の継続がなければ雇用の安定はない」という事実
1947年、今から66年前に労働基準法は制定されました。当時は、戦前の「過酷な労働者いじめ」への反省から、労働者保護の目的で同法律が制定されたのです。しかし、日本の企業は国際化やITの進歩により、当時とは置かれる状況が大きく変わりました。年々、ものすごいスピードで変化する社会から見れば、戦前の「過酷な労働者いじめ」は、遠い昔話となってしまったのではないでしょうか。もちろん諸問題も存在していますが、労働環境は戦後直後と比べると改善されていることは間違いないでしょう。そんな状況になった今も「一度、雇ったら従業員の契約の解除ができない」というのは、企業にとって足枷となります。よって、「追い出し部屋」というような問題が起きてくるのです。企業が生き残るためには、業態転換は止むを得ないですし、それに伴っての人材の入れ替えは必然です。
雇用の安定以前に「企業の継続がなければ雇用の安定はない」という事実を認識する必要があります。そして、解雇規制緩和が進めば「企業の将来を担うゼネラリスト」と「専門職と呼ばれるスペシャリスト」の棲み分けが、一層加速すると思います。
解雇規制緩和により、いよいよ人材流動化時代の幕開けか?
企業の看板で仕事をするのではなく、自分の能力で働き、それが評価されることによって、労働者が主体的に職場や仕事内容を選べるようになる可能性があります。一見すると、解雇規制緩和は労働者には不利な制度にも見えますが、向上心やスキルのある労働者にとっては、転職などによって給与アップやキャリアアップを実現しやすくなるともいえます。この流れを上手くつかめる労働者にとっては、解雇規制緩和は良い制度だといえるでしょう。ただし、前提として「終身雇用は幻想である」「キャリアチェンジや転職は当然だ」という認識を、国民全体で共有する必要があります。以前から言われていることではありますが、解雇規制緩和によって本格的な人材流動化時代の幕開けとなるかもしれません。
「人財」を育て企業の健全な存続を支援するプロ
佐藤憲彦さん(さとう社会保険労務士事務所)
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