「ながらスマホ」で自動車事故、危険運転に?
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自動車運転で物損・人身事故を起こしたときの処罰
運転中に携帯電話を使用して通話(ハンズフリーを除く)し、またはメール等で画面を注視することは、それ自体が交通違反であり、反則金や犯則点数が課されます。それでは、運転中の「ながらスマホ」で事故を起こした場合、処罰はどうなるのでしょうか。物損事故と人身事故に分けて考えてみます。
まず、物損事故の場合、刑事罰はありません。刑法の「器物損壊罪」(刑法261条)は過失犯処罰規定がないため、不注意で他人の物を壊しても器物損壊罪には当たらないのです。ただし、交通違反として反則金及び犯則点数が科されます。また、民事の賠償における過失割合でも当然考慮されます。
それでは、人を死傷させた人身事故の場合はどうでしょうか。昨今の悪質・悲惨な交通事故に対応するために、平成26年5月20日より「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(通称:自動車運転死傷処罰法)」が施行されました。この法律は、これまで刑法の自動車運転過失致死傷罪と危険運転過失致死傷罪で処罰されていた自動車運転における死傷事故について、運転の悪質性や危険性などの実態に応じた処罰ができるように制定されたものです。
現在、死傷事故を起こした場合で、同法が定める危険運転・準危険運転に該当しない場合には、7年以下の懲役若しくは禁固、又は100万円以下の罰金という処罰が規定されています。これは、従前の自動車運転過失致死傷罪と同じ罰則になります。
「ながらスマホ」は刑罰に値するとの自覚を
危険行為である「ながらスマホ」には危険運転・準危険運転罪の適用はないのでしょうか。これについては、法律が危険運転・準危険運転とされる場合を類型化していますが、携帯電話の使用はここに含まれていないので、単に「ながらスマホ」だけを理由として危険運転・準危険運転として処罰されることはありません。
しかし、自転車運転中や歩行中の「ながらスマホ」で人にぶつかるなどして相手を怪我(死亡)させた場合、刑法の「過失致死傷罪」や「重過失致死傷罪」に問われる可能性があります。「自動車じゃなければ大丈夫」ということはありません。
結局のところ、「ながらスマホ」で事故を起こした場合、これまでと比較して刑罰の上限が重くなる、ということはありません。とはいえ、これまでの法定刑でも処分が軽いということはありません。特に、「ながらスマホ」の危険性が指摘され、事故も相次ぐ中で、「ながらスマホ」により事故を起こした場合、具体的な刑罰を決めるに当たって、刑罰を重くする方向で判断される要素になることはあるでしょう。
事故はいったん発生してしまうと取り返しがつきません。また、加害者・被害者ともに回復できない損害を受けてしまいます。処罰を厳罰化しても、事故が全てなくなるわけではありません。「ちょっとだけだから」「事故を起こさなければ大丈夫」という甘い気持ちではなく、一人一人の事故防止に向けた意識が求められているのではないでしょうか。
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