「脅し育児アプリ」がトラウマの原因に
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子どもの脳神経に「恐怖心、自己否定」が植え付けられる
今、「脅し育児アプリ」が流行しています。レビューを見ると「怖がった。効き目があった」という賞賛の声も多くあります。しかし、それらを読んで、様々な症状に苦しむクライアントの幼少期の体験が思い浮かびました。
私たちが生活の中で体験する出来事は、脳の神経に蓄えられます。記憶の中で「怖い」「悲しい」「辛い」「頭が真っ白になった」といった体験の積み重なりが飽和状態になった時、うつ病、不安障害、対人恐怖症、強迫性障害、不登校などの症状として出てきます。これらは、何歳になったら症状として出てくるか誰にもわかりません。
私はEMDRセラピーを含むカウンセリングで、現在の症状の原因になっている記憶から「感情、身体感覚を過去のものにする処理」を支援しています(EMDR= Eye Movement Desensitizationand Reprocessing:眼球運動による脱感作と再処理法)。EMDRセラピーでは、脳に蓄えられた記憶を一つずつ処理します。
具体的な記憶の例を挙げてみます。現在60代の人のものです。「4歳か5歳だった。母に『お仕置き』として庭にあった池に入れられた。真っ暗だった。祖母がそばで一緒に怒っていた。イメージは、池の中に自分の下半身入っていて、池はすごく深い感じ。下半身が冷たい。私は愛されていない。恐怖心と母に対する不信感がある」。
この人のお母さんの意図は「叱ることによって何かをしつけよう」であったかもしれません。しかし、子どもの脳神経には「恐怖心、自己否定、他者への不信感」が植え付けられました。そして、半世紀以上が経った今でも、ありありと思い出されるのです。
脅し、叱責、体罰は、何らかの精神的症状につながる危険性がある
成人まで心身ともに健康で過ごされた人でも、成人後のトラウマ的な体験の重なりで何らかの症状を呈することがあります。その場合には、記憶の処理にそれほど長い時間は要しません。しかし、幼少期からのトラウマ的体験を持っている人は、その視点で記憶が集約されています。処理する記憶の数も多くなり、時間がかかるケースが少なくありません。
健康な心を持った大人を育てるためには、家庭が子どもにとって「安全で安心できる場所」であることが大切です。脅し、叱責、体罰などは、「子どもの脳神経に否定的な記憶として蓄積されること」「長期的に何らかの精神的症状につながる危険性があること」をトラウマ治療者の立場から訴えたいと思います。
アプリを使った結果、子どもに不安症状が出ている場合には「言うことを聞いてほしかったから使ったの。もう二度と使わないと約束するね。ごめんね」と正直に穏やかに伝えてみましょう。そうすれば、少しずつ安心感を取り戻していくのではないかと思います。そして、「一度約束したら必ず守る」。このことが、子どもからの信頼を得るためには必要です。
アドラー心理学&発達性トラウマセラピスト
福田 シェシャドゥリ 育子さん(松戸こころの相談室)
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