お祭りでBGM、著作権侵害に?
- カテゴリ:
- 法律関連
盆踊りなどで音楽を流せば、著作権者の「演奏権」侵害にあたる?
7月、大阪では、日本三大祭りの一つ、天神祭が催されます。大阪に限らず、夏は、盆踊りなどの祭りが全国各地で開催される季節です。今回は、盆踊りなどで流される音楽と著作権の問題を考えてみます。
音楽を流すときに問題となる著作権は「演奏権」といわれるものです。「演奏権」とは、著作物を、公衆に直接見せ、または聞かせることを目的として、演奏する権利です(著作権法22条)。同条は、「演奏権」のほか上演権についても同様の規定をしています。上演とは、演奏以外の方法で著作物を演じることです。演奏・上演は、ライブに限らず、CDやDVD等を再生する方法も含まれます。
「演奏権」侵害にならないための3要件
ここでいう「公衆」は、不特定かつ多数のみならず、特定かつ多数の者も含みます。「公衆」にあたるかどうかは、ケース・バイ・ケースであると言わざるを得ませんが、盆踊り会場に誰もが入れるのであれば、盆踊りなどで音楽を流すことは、公衆に直接聞かせることを目的としていると考えられ、著作権者の「演奏権」を侵害しているのではないかという点が問題となります。
これに関しては、①営利を目的とせず、②聴衆や観衆から料金を受け取らず、③実演家に対して報酬が支払われない場合は、演奏権の侵害にはなりません(著作権法38条1項)。この3要件すべてを満たしていれば、「演奏権」は制限され、著作権者等の許諾や対価の支払いは必要ありません。
例えば、町内の親交を目的として、町内会が主催し、場所も近くの小学校のグランドであって、入場料や参加料等の名目を問わず料金をとらない場合に、市販のCDに収録されている音楽を流すにとどまるのであれば、この3要件すべてを満たしているので、「演奏権」の侵害にはなりません。
また、CDの再生ではなく、太鼓や笛、鉦などの楽器で楽曲を演奏する場合でも、演奏している者(実演家)に対して報酬が支払われないのであれば、上記③をクリアしますので、問題はありません。
昔ながらの盆踊りや夏祭りであれば、一般には、上記3要件すべてを満たしていることが多いと考えられますので、そう神経質になる必要もないでしょう。
中小企業の知的財産権を守る専門家
長谷川武治さん(関西生祥法律事務所)
関連するその他の記事
不正競争防止法の改正その2(後編)
得重貴史さん
国際法務・知財に豊富な経験とスキルを持つ弁護士
不正競争防止法の改正その1(メタバース規制も視野に)
得重貴史さん
国際法務・知財に豊富な経験とスキルを持つ弁護士
相続登記の義務化と手続きの簡略化で所有者不明土地の問題解決へ。放置物件の有効利用は進むか?
能登ゆかさん
相談者の心に寄り添う司法書士
あっせん団体「ベビーライフ」廃業で問題に。特別養子縁組とは?海外に比べ養子制度が浸透しないワケ
半田望さん
市民の法律問題を一緒に解決する法律のプロ