商品名に「官兵衛」使用 法的な注意点
「軍師官兵衛」で姫路市界隈では空前の官兵衛ブーム
NHK大河ドラマ「軍師官兵衛」で黒田官兵衛が取り上げられ、官兵衛生誕の地である姫路市界隈では空前の官兵衛ブームが訪れています。このブームに乗って、各企業が自社の商品に「官兵衛○○」「官兵衛の△△」「□□官兵衛」などと名付けて発売しています。
商品を販売する場合、商標登録を行うことが一般的です。商標登録をする意義は主には「①自分の商品と他人の商品を区別すること」「②登録した商品名(商標)を独占的に使えること」などがあります。では、「官兵衛」という歴史上の人物である故人の名称を商標登録する際に何か注意すべき点はあるでしょうか。
公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標は登録できない
まず、商標登録する際には、商標法という法律の基準を満たす必要があります。「官兵衛」という名前を商標登録する場合、商標法の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」は登録できない、という規定に抵触する可能性があります。なぜなら、官兵衛のような郷土の偉人は、特に当該地域において強い顧客吸引力を発揮すると考えられる一方で、地域住民らに敬愛の情をもって親しまれていますので、そういった国民や住民の反発があることも否定できないからです。また、もし、いらっしゃるとすれば、官兵衛の末裔といった親戚縁者らの心情を害する可能性もあるでしょう。
しかし、かといって「公の秩序又は善良の風俗」といった曖昧な条項を広く解釈しすぎると、何も商標登録できなくなってしまうことになります。何事もバランスが大事です。そこで、「①歴史上の人物の周知性」「②当該人物に対する国民または地域住民の認識(イメージ)」「③当該人物名の利用状況」「④当該人物名の利用状況と商品名等との関連性」「⑤商標登録に至った経緯」「⑥当該人物と出願者との関係」などを総合的に勘案して、当該出願が「公正な競業秩序を害するものであり、かつ社会公共の利益に反するかどうか」という観点から、商標登録が許されるか否かを判断するべきです。
では、もう少し具体的に考えてみましょう。例えば、ずばりそのまま「官兵衛」という名前そのものを商標登録しようとした場合、ブームに便乗して、地域振興といった公益的な施策を阻害することを十分知りながら「官兵衛」という名称による利益を独占する意図であると判断されるため、商標登録はできない可能性が高いでしょう。しかし、「官兵衛○○」など、商品名がその商品の特徴を表しており、ある程度、特定性があるものの場合、地域振興といった公的な目的を阻害するおそれも少ないでしょうから、商標登録は可能であるものと考えます。
商品を販売する場合、商標登録を忘れずに
最後に、商標登録せずに商品を販売する場合について一言。その場合、同じまたは類似の商標を登録した人から販売の差止めや損害賠償請求をされる可能性があります。
もし、商品がヒットしても、販売できなくなったうえに損害賠償を請求されてしまうなんて踏んだり蹴ったりです。そうならないためにも、商標登録はしておいた方が良いでしょう。